声は2本の声帯が開閉することにより作られます。まず声帯が閉じられ、そこに息が流れることにより、一瞬声帯は開きますが、すぐにまた閉じます。さらに息が流れ続けることにより、この開閉は繰り返されます。声帯がこのようにぶつかることにより音が発生し、声になります。このように声帯は高速でぶつかり続けていますので、全く疲れない理想の発声など存在しません。声を出す以上必ず喉は疲れます。しかし喉を守るために良い発声をすることも大切なことです。今回はこのことについて考えてみます。
声帯がぶつかり合う過酷な状況ではありますが、日常でも声は使っていますので、多少歌っても極度に疲労することはありません。しかし声は疲れていきます。その3つの例を挙げておきます。
1つ目は時間です。長時間歌うといつもより長く声帯の打撃が続きますので、当然疲れます。
2つ目は大きな声です。大きな声を出すためには声帯が強く閉鎖されていなければなりません。それを開けられる圧力のある息を流して声を出すことになりますので、強く声帯はぶつかります。当然普通より疲れやすくなります。
3つ目は高音です。高い声はより高速で声帯がぶつかりますので、それほど大きな声でなくとも、疲れやすくなります。
というわけで声帯の疲労は避けられないのですが、少し歌っただけで極度に疲労することもあれば、結構無理しても、大丈夫なこともあります。この差を考えてみます。ひとつは慣れです。良い発声をしていても疲れやすいこともあれば、明らかに無理な発声をしていても結構長く歌えることもあります。無理しないことにこだわりすぎずに、声帯を強くしていくことも必要です。もちろん無理しすぎないことも重要で、脱力にこだわりすぎるのもダメだということです。
ここで話を終わりにすると、練習を重ねて喉を強くしようとなってしまいますので、今までの話を踏まえた上で、喉に良い発声を考えます。声帯の開閉をビデオ撮影しスロー再生するとバタバタと不規則に声帯が動いている様子が分かります。そこで、声帯をしっかりと引き延ばした状態で声を出す様子を同じように撮影しスロー再生すると少し違う運動が観察されます。声帯全体が規則的に無駄なく動く様子が見られます。これが唯一声帯に無理させない発声になります。それでもいつもより強く出したり、高音を長く練習すると当然疲れます。しかし少しその疲れは緩和されます。
この声帯が引き延ばされた状態を歌のレッスンでは喉を開けると言っています。しつこく、喉を開けてと指摘されるのはこの無駄のない声帯の振動を作り出すためです。だから歌の練習がある程度進んではじめて喉を開けることに取りかかるのではなく、まず最初に喉が開いた音を見つける必要があります。また喉を開けすぎていると指摘されたということを聞いたことがありますが、これはあり得ません。本当に声帯の張力がかかりすぎていれば、音程が上がってしまいますので、指摘は音程が違うということになり、喉が開きすぎているということにはなりません。
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