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ジラーレとアクート~発声の仕組み26

 パッサージョを超えて高い音の練習をするときに、ジラーレさせるとか、アクートの声とか分かるような分からないような用語が並ぶことがあります。その時々に声帯はどうなるのかを説明していきます。

 高い音を出すときに、「かぶせる」「曲げる」といった表現がされます。イタリアではGirare(ジラーレー回す)ドイツではDecken(デッケンー覆う)といわれます。なんとなく共通したイメージが感じられます。なぜこの曲げるとかかぶせるとかが必要なのでしょうか?

 高い音に向かって声帯は徐々に薄く引き延ばされなければなりません。声帯は気管の中にあり、前は閉じていて後ろは開閉できるようになっています。この声帯を前後に引っ張ることが声帯が薄く引き延ばされることになりそうですが、そのときに声帯の前が下に下がるように引っ張られていきます。発声の仕組みで図解していますので、参考にしてください。つまり声帯は前下、後上の方向に引っ張られますので、高い音に向かって声帯は立ってくるように感じられるのです。結果頭をやや下を向くような方向に傾けることになります。この運動を回す、かぶせる、覆うという風に表現しているのです。

発声の時に手をつける人が多いのですが、一番多い形に、耳の周りを手が一周するような形、耳の下から耳の後を通って、さらに耳の上から前に向かっての動きです。これがジラーレの感覚です。

 チェンジさせるときにも全く同じ運動をさせます。高い音に向かっては必要不可欠な動きです。しかしこの声帯の進展運動のみが働いて薄い、高音に合う声帯の準備ができても、ファルセットに近い音質になり、力強さは出てきません。つまり声帯の閉鎖が足りないのです。そこでアクートが必要になってきます。十分に伸ばされた声帯の中央がしっかりと閉鎖されると、とても明るい鋭い音が出てきます。これがアクートといわれる音です。

 ネットでベルカントはジラーレで歌い、現代はそうではなくアクートで歌うとか、女性はジラーレで歌うが、男性はアクートで歌うといったものがありましたが、残念ながら違うでしょう。もしそうだとするとベルカントの高音は常に声帯にやや隙間のあるファルセットのような音で、その音がだめなわけではありませんが、それだけしか使えないとしたら、高音でフォルテは出ません。未完成な発声法だということになります。逆にすべて高音をアクートで歌うとすればフォルテしかありませんので、デクレッシェンドはないことになります。これも未完成な発声法です。高音は十分に引き延ばされた声帯が準備されたまま、自在に閉鎖の強さを変化させられるのが目標とする声です。ジラーレで歌った方が良いとかアクートで歌った方が良いといったようなものではありません。全く別の運動だということです。