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精神状態と発声~声の診断11

精神状態と歌

 演奏家にとって精神状態は演奏と深く関係があるものです。中でも歌は一番繊細にその影響を受けるものだと思います。自分で練習していたときには出せなかった高い音が、先生の応援と緊張感とが作用して出せたり、逆に今日は調子が悪いと思い込んでしまうと、いつも出来ていたものが出来なくなったりもします。歌はとても繊細なものです。 

精神状態が練習の妨げになることもある

 発声や音楽を見つめていくことが声楽家の仕事になりますが、精神状態がそこに絡んできますので、とてもやっかいなこともあります。良い方に作用するのであれば、そのまま続けていけば良いのですが、悪い方に作用するときにはなんとかそこから抜け出したいところです。

 体調が良いと感じるときは必ず精神も落ち着いています。悩み事などがあると、本当は体調は良くても良いとは感じられず、また、だんだんと体調も悪い方に引き込まれてしまいます。いろいろな健康法がありますが、ストレスの無い状態でいることに勝る健康法はないのではないかと思ったりもします。

精神状態から来る悪循環

 調子が悪いと思い込んでしまうと、まず筋肉の柔軟性がなくなってきます。それでも無理して筋肉を動かそうとするために筋肉が固くなり、さらに柔軟性に欠けてしまいます。そのうちにだんだんと力を入れられなくなってしまい、高い音や低い音、大きな音や小さな音が出しづらくなり、もっとひどくなってくると、中間域の音の安定感がなくなり、長い音が続かなくなったり、音程が常に低くなったり、コントロールのきかない揺れが出てきたりします。

テックニックで脱出

 もし発声のコントロールがある程度出来るようでしたら、まずは声帯の柔軟性を取り戻すことが最善の方法です。声帯を伸ばしたり縮めたりを繰り返してみます。少し時間がかかることもありますが、スムーズに動くようになると、いつもの音域を歌えるようになります。さらにこの練習で横隔膜もある程度連動して動いてきますので、自然な支えも見つけられていきます。これがうまくいかないときは、声帯が少し腫れていたりなど、声帯自体の問題も考えられます。そのようなときには自分のせいではなく、声帯の状態が悪いと思うことも大切です。一時的な声帯の不調は数日で解決しますので、今日は仕方が無いとして、出来る練習をすれば良いのです。

歌う楽しさの再発見

 もう一つ良い方法があります。基本的に歌うことは快感です。うまく歌えても、そうではなくても歌うこと自体快感を伴います。これを思い出して、歌いたいと思う気持ちになっていければ、多少の調子悪さはどこかに行ってしまいます。私がよくやるのは練習の前に音楽を聴くことです。歌いたいという気持ちが自然にわき上がるまで、CDをかけて普通に音楽を聞きます。ピアノや室内楽が多いのですが、音楽で頭の中をいっぱいにすると、考えていたことがどこかに行ってしまい、本来の音楽の喜びのようなもので頭がいっぱいになりますので、すっきりして音楽に向かえることが多いです。

考えすぎるのも悪いことではない

 気持ちのコントロールはとても難しいものです。色々と考えてしまい調子を崩してしまうことのある人は、より繊細なとても深い音楽を作る可能性を持った人なのかもしれません。ですので、それは長所なのかもしれません。その長所がより生きてくるような音楽との関わり合いを見つけられれば、とても素晴らしいものにたど着けると思います。

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