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横隔膜と声帯の閉鎖

思い出

子供の頃に学教の宿題で、近所のお年寄りに昔の町の様子を聞いてくるというのがありました。私の家もそうでしたが、よく知っている近所の家は核家族の家庭ばかりで、お年寄りと同居している知り合いの家はありませんでしたので、知らない家でしたがお年寄りの方がいらっしゃる家を見つけて、少し話が出来ないか尋ねてみました。今考えるとすごいことだと思うのですが、その時快く家の中に入れてくださり、おじいちゃんと話をさせてくださいました。

声が出ない

その当時離れたところではありましたが、父方も母方も祖父祖母共に元気で、たまに遊びに行ったときには普通に話をしていましたし、一緒に散歩をしたりもしていましたので、今回もそのように話が出来るものだと思っていたのですが、通された部屋には布団が敷いてあり、そのおじいちゃんは横になったままで、親族の方がそのまわりに数人いらっしゃいました。この状況で見ず知らずの子供をよく入れてくださったと今でも思います。話を聞かなくてはならないのですが、この状況が衝撃的で、何を話したのかはよく覚えていません。おそらく、昔はもっと田んぼが多かったのかとか、戦争の時の生活はどうだったのかなどを聞いたと思います。私が質問するとおそらく娘さんだと思いますが、おじいちゃんの耳元で大きな声でよく聞こえるように繰り返してくださいました。そしておじいちゃんの声は息だけで全く声にはなっておらず、娘さんがこういうことを言っているのだと思いますと話をしてくださいました。今思い出しても感謝で一杯です。

声帯が閉じない

ここからは推測です。声は出ていたけれども聞き取れないのではなく、息だけで全く声が出ていませんでしたので、おそらく声帯が全く閉じていなかったのだと思われます。声帯は声帯靱帯といわれる振動体のまわりの筋肉(声帯筋)が収縮することによって閉じられ、そこを息が通過するときに閉じたり開いたりを繰り返します。この時の打撃音が声として聞こえてくるのですが、声が出ないということはこのシステムが機能していなかったのだと思われます。声帯筋自体の問題も考えられますが、横隔膜の影響が一番大きかったのではないかと思います。

横隔膜

横隔膜は体を起こしているだけでとてもしっかりと働いていますし、歩くことが出来ればさらに力強く動きます。この強さがあれば、声帯を閉じることは難しくないのですが、寝た状態が長くなってしまうと、体を支える必要がなくなりますので、途端に働きが弱くなってしまいます。そうすると声帯筋だけでは声帯の閉鎖が出来なくなり、声が全く出ないということになります。起きている、歩くことが出来る、ということは発声においてとても大事なことなのです。

横隔膜が使えない

発声で困っている方には、横隔膜がうまく使えないと思っている方がとても多いのではないかと思います。しかし使えているか使えていないかの話ではなく、使えているのだけれどもコントロールが繊細には出来ないとか、まだ高い音や大きな音を出すには弱いとかという風に考えた方が良いです。声が出せるだけで横隔膜は力強く仕事をしているんだということをまずはしっかりと認識していきましょう。

いつまで歌えるか?

時々何歳まで歌うことは出来るでしょうか?といった質問を受けることがあります。その時に、ここまで通っていらっしゃれる間は歌えるし、上達し続けますと答えています。実際に年齢を重ねた方でも、どんどん高い音が出せるようになったり、声量が増えたりしていますので、年齢とは関係なく成長できるものです。とりあえず元気に歩きましょう。