クラッシック音楽の場合例えば四分の四拍子、ト長調のように、拍子と調性が必ず出てきます。学校の音楽のテストのためにこれらを丸暗記した人も多いのではないでしょうか?おそらく必要性は分からずテストのために覚えることが多かったかと思います。
この中で拍子はわかりやすいかと思います。四分の三拍子を例に取ると、最初の四は四分音符の意味で、今回はこれは省略します、後半の三拍子に注目をします。これは単純に三拍ごとにアクセントがあります、と言う意味です。日常のくらしの中にたくさんの音がありますが、誰もそれらの音を作品だとは思いません。その一つの理由は規則的なアクセントがないからです。そこに規則的なアクセントが感じられると作品として感じられるようになります。例えば目の前のテーブルを不規則に叩いてみます。まだ音楽にはなりません。しかし、例えばタタタンタン、タタタンタンと同じ繰り返し叩くと途端に音楽になっていきます。つまり日常の音でもそこに規則性や次の予測がつきそうな音になると音楽が始まることになります。
リズムに関しての拍子の意味は分かりやすいと思います。今度は音程に関して考えてみます。拍子が決まってリズムの規則性のある中で、今度は音程を変えていきます。完全にランダムに音を並べていくとやはり音楽にはなりません。そこで何か一つの音を決めてそれを基準音とします。例えばピアノの白鍵だけ弾くことにします。さらにドの音を基準の音にします。いくつかの音程を動いた後必ずドの音に戻るように音を並べていくとドの音に戻ってきた時に安心感があるように音の配列が出来ます。ドの音は日本ではハの音になりますので、これがハ長調です。無秩序な音程の配列から、ドの音にたどり着くと安心感があり、さらにドの音にいつか帰るはずだという予測が立つ音の配列が出来れば調性が確立していきます。
このように拍子や調性は無秩序な音の世界に何らかの秩序を作ることによって、まとまりのある世界にしていく作業になります。自然の音が音楽に変わっていく時に必要な条件だったわけです。民族音楽や昔の音楽に目を向けると西洋音楽と同じような拍子や調性ではないものもありますが、アクセントの規則性や中心音に回帰するような音程の配列は必ずあるように思います。色々と調べてみても面白いのではないでしょうか。
先ほどの音程を並べる条件に白鍵だけで基準音をドに決めましたが、これは長調の音階を作るためです。このまま基準音をラにすると短調になります。もちろん他の音も考えられますが、最終的に西洋音楽では長調と短調だけが生き残りました。ちなみにファから始める音階を中世ではリディアと呼んでいましたが、ファからシの音に音が移る時の違和感(増4度)からリディアではシの音に頻繁に♭が付けられ、それはもうヘ長調と同じになってしまいます。
色々と話を付け足していくと難しくなりますが、もう少しすすめます。ドを基準音にするハ長調ですが、ドの音を予感させるのに都合の良い音がいくつかあります。まずはシの音、シで終わると強烈にドの音に移ってほしいと感じられます。その他にソの音、レの音もドの音を期待させる音です。実際に白鍵だけをランダムに弾いてこれらの3つの音で止まると、ドの音を次に聞きたくなります。このソシレが属和音と言われる和音で、この和音が出てくることでドミソの主和音へ行く流れが出来ます。ここに和声が生まれてきます。
さらにドから始まる長調とラから始める短調だけが残ったという話をしましたが、短調では長調のシの音のように半音で基準音に戻る音がありませんので、基準音ラの2度下のソの音には頻繁に♯が付けられます。このような工夫が必要な短調は長調よりも不完全な音階だとも言えますが、それ以上に長調では表現できない音の世界を作り出せるので、短調は残り続けたのだと思います。
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