オペラはもちろん演劇の要素がとても強いですが、
演劇もしくは映画とは随分違う部分があります。
演劇や映画を見に行く時に前もってどのようなあらすじなのかを調べていくことはほとんど無いと思います。
先に見に行った友達から物語の結末を聞いてしまったら、
とても残念に思うかもしれません。
オペラの場合はあらかじめストーリーを知ってから見に行った方が圧倒的に楽しめます。
言語の問題も多少あるでしょうが、
イタリア人がイタリアオペラを見に行く時も、
ストーリーを頭に入れてから見に行く人が多いです。
つまり、通常劇を見る時に一番興味のあるだろう、
ストーリーがどのように展開するのかとか、
それがどのようなエンディングになるのかをドキドキしながら味わっていく緊張感を楽しむことが
オペラではそれほど大切なことでは無いということの現れだと思います。

実際にオペラを見に行くと頭の中が忙しくなります。
大抵原語上演で字幕がつきます。
字幕を読んでいかないと物語が分からなくなるので、一生懸命字幕を読む。
遠くの席からだと顔があまりよく見えないので、
登場人物の名前がよく分からず、混乱してしまうこともあります。
さらに音楽も聴きたいし、演技も見たいのに、字幕は外せない。
当然歌い手の表現なども感じたいし、合唱やオーケストラもしっかり聴きたい。
いろんな要素があって、頭の中が忙しくなります。
オペラをすすめられて一度聴きに行ったものの、あまりにも疲れてしまって、
その後は聴きに行ったことが無いという人も多いです。

ここで最初の話ですが、他の劇(演劇や映画、ドラマなど)と違って、
ストーリーの展開やエンディングがどうなるのかのドキドキを味わおうとすることを
最初から期待しない見方をした方が、オペラは楽しめます。
もちろんストーリーはどうでも良いというわけではないので、
最初から予習していくということです。
ごく簡単にストーリーをまとめたものから、
もう少し詳しく、各幕ごとに登場人物の説明も加えながら解説してあるもの、
台本すべての翻訳など、有名なオペラは色々な資料を前もって手に入れられることが多いですので、
とりあえずそれらを頭に入れておくと、
必死に字幕を読んでいかなくてもある程度内容を分かりながら聴くことが出来ます。
そしてこれらの準備が出来ないままに会場に入ることになったら、
一生懸命に字幕を読んでストーリーをたどるのも一つですが、
ストーリーを諦めて、オーケストラの演奏会に来たように純粋に音だけを楽しむのもありかと思います。
音楽がストーリーのおまけのような作曲はしませんので、
音楽だけに集中してもきっと面白いはずです。
その後で、ストーリーを調べても良いと思います。
歌を聴く時はこの順番だという人も多いと思います。
ポップスでも最初は音楽とほんの少し耳に残る歌詞だけで、
その後何度も聞いた後にちゃんと歌詞まで聴くことは多いのでは無いでしょうか。

劇の観点から見たオペラの特殊性を書いてみました。
オペラはミュージカルととても近い感じがしますが、
ミュージカルも前もってストーリーを調べていくことは少ないのでは無いでしょうか?
そのためレチタティーヴォのような部分はとても少なく、
歌ではないシーンは通常の芝居のように進められます。
このため特に女性のチェンジがオペラとミュージカルでは違いがあります。
ミュージカルとオペラは近い感覚がありそうですが、
劇の観点からオペラはミュージカルとも違う部分がありそうです。

ミュージカルの批判をしているわけでは全くありませんが、
あまり歌が上手で無くてもミュージカルの世界では舞台に出ることが可能です。
歌が上手な方がもちろん良いのですが、
演劇の感覚がオペラと違うために、十分に楽しめます。
以前女性3人だけで演じられるミュージカルを見に行ったことがあります。
そのキャストがオペラ歌手と、宝塚の方と、有名な女優さんでした。
当然三重唱などもありますので、音楽家からの視点で考えると、
あまり違う歌い方や声の人をキャスティングすることはありません。
音楽の一貫性もハーモニーも崩れてしまいます。
しかしこの時はこれが上手く働いて、女優さんは芝居がとても上手く、
歌っているシーンでも芝居の方に引き込まれるし、
オペラ歌手はとても歌が素晴らしく、音楽に耳がいきます。
さらに宝塚の方がその両方を上手くミックスさせていて、
バランスの悪いはずのキャスティングが逆に面白い効果も生んでいました。
名のある女優さんが出ていましたので、客席もしっかり埋まっていて、
興行的にも上手くいっていたのだと思います。
オペラの場合、どんなに演技の上手い役者さんでも歌のトレーニングをしっかりしていないと、
最後まで歌うことすら難しいし、
無理してなんとか歌えても歌を演技でカバーすることは難しいです。
オペラは演劇ではありますが、特殊だという話でした。
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