軽い声、重い声といった声の分類があります。軽い声はレッジェーロ(leggiero)、重い声はドラマティコ(dramatico)と言われたりしますが、このような分類に限らず、いつもの声よりも重いとか軽いということもあります。そして軽い声は全く問題ないのですが、重い声は喉を痛めやすいので、慎重に練習する必要があります。今は違っているかもしれませんが、音楽大学でも1~2年生の間は、試験でヴェルディ以降のオペラアリアは歌ってはいけない、といったような規則を設けているところもあるといった話を聞いたことがあります。
声の重さというのは理解しづらいところもあるかもしれません。当然何gといった重さで測れるものではないし、そうなると音量だと思うかもしれませんが、何db以上は重いといったものではありません。重い声で小さな声も出せるし、軽い声で大きな声を出すことも出来ます。では違いは何かというと、声帯のふれ合っている面積の違いになります。歌うときの声はしゃべるときよりも薄い声帯の準備をします。結果、ふれ合っている声帯の面積は小さくなります。ですので、歌う声の中心音はしゃべるときよりも高くなるのが普通です。強く閉鎖させると大きな声が出ますし、当然閉鎖が強くなった分声帯の振動する面積も多少増えますが、この範囲だと音の重さが大きく変わったとは言われません。通常の音量の変化よりももっと厚い声帯を準備したときに重い声になったと言われます。このような声を作るときに、少し低い音で音をつかみそのまま音程を上げていく練習をしたり、場合によっては実際に歌うときにも少し低い音程から歌い始めることもあります。どちらにしろこの時に普通に歌うときよりも厚い声帯で歌いますので、ふれ合っている声帯の面積が広くなり、重い音になります。もちろん低い声の喉の状態を準備した上で正しい音程で歌い始めれば良いので、いつも低い音からずり上げていかなければならないのではありません。
重い声を出すにはいつもの歌いやすい声よりも厚い声帯を準備することになるのですが、当然振動する面積が増えた分声帯に幅広く振動が起こります。この振動の多さが声帯に負荷をかけていきます。良い発声をしていても負荷はかかります。ですので、喉がこの厚い振動に慣れるまでは慎重に練習をする必要があるのです。まずは厚い振動を作るところから始まりますが、重い声が出るようになったら、喉をよく観察して、無理をしているようだったら、とりあえずその日の練習は止めにし、必要があれば重い声の練習は数日休み、その後また挑戦するといった慎重さが必要になります。
まずは疲れやすくなりますので、短時間歌っただけなのに疲労を感じたり、声が出しづらくなったり、または少し喉がヒリヒリしたりしますので、そのような現象を感じたらすぐに一旦止める必要があります。ただこの状態にだんだん慣れていったときに、この違和感に気付かないこともあります。強い疲労やヒリヒリした感じは少なくなったとしても、高い声が出なくなってきたり、長いフレーズが歌えなくなってきたり、小さな声がすぐに切れてしまう、もしくは小さな声は使えなくなる。常に音程が少し低くなってしまう。激しい音楽は歌えても静かな音楽は歌えず、結果表情が限定されてしまう。等の現象が出てきたときも危険信号ですので、まずは重さの練習は止めて、歌いやすい声を取り戻す必要があります。軽い声が無くならないようにしながら、少しずつ重くしていくのが一番良いやり方です。
先ほどの音楽大学の試験の例のように、危険性があるのだからとりあえず禁止にするといった考え方もありますが、あまり賛同しません。喉に負荷がかかるのは重さだけではありません。長い曲、高い音、やや高い音が長く持続する、ブレスの時間が十分に取れない曲、音程の差が激しい曲など色々あります。その中で重さだけストップがかかるのは変な感じがしますし、重い曲は絶対に重い声で演奏しなければならないわけではないということもあります。高い音に関しては移調をしたり、違う音に変えたりしない限りは出さなくてはならないのですが、重さに関しては少し軽い声で練習することは十分に有り得ます。禁止するより、ちょっとした違和感を見逃さないことが大切なのでは無いでしょうか?
カテゴリー一覧
久米音楽工房 声楽、発声、ピアノのレッスン 神奈川県川崎市
