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良い声の条件~声の診断17

 良い声の条件は色々考えられますが、いくつか挙げてみようと思います。

声門閉鎖

 当然のことですが、声帯を閉じることが最も大切なことになります。声帯が閉じていなければ全く声は出ません。何らかの原因で声帯を閉じる筋肉やそれに関する神経を損傷すると声帯を閉じることが出来なくなることがあります。残念ながらそうすると発声をどんなに頑張っても声を出すことは出来ません。この声門閉鎖は2段階のしくみがあり、一つは声帯の後ろが閉じること。もう一つは声帯筋による閉鎖で、より強い声を作るときに必要な閉鎖です。長くなりますので、詳しいことはまた別の記事で書きます。ただ全く閉鎖が出来ないと声は出ませんので、必要な条件ではありますが、分からないものではありません。

広い音域

 喉を開けると言われているものですが、声帯を引き伸ばす力の調節が上手く機能すると通常1オクターブ半から2オクターブほどの音域の声が出るようになります。これよりも狭い場合は声帯の伸展機能に何か問題があることになります。先ほどの声門閉鎖は問題があると声になりませんので、歌に限らず大きな問題になります。一方声帯の伸展機能は歌の場合に決定的に必要なものになります。音域がある程度広くないと歌える曲が限られてしまいますし、この機能がコントロールできないと音程をキープすることが難しくなります。つまり歌として成立しなくなります。繊細に変化させられると一番良いのですが、まずは音域の広さが問題になります。

クレッシェンドとデクレッシェンド

 声が出ていることと、ある程度の音域があることが前の2つでした。次は音量を変化させられることです。音量の変化は表現のために出来た方が良いと思えますが、それだけでは無く、良い声の条件になります。声は声帯の伸展の具合と声帯の厚さの変化で様々な音程の、様々な音質の、また音量の声を作っていきます。クレッシェンドするためには声帯をだんだん厚くしていく必要がありますがそうすると音程が下がってしまいます。そこで声帯に張力を加えて音程は下がらず、厚くするという調整をしていきます。先ほどの2つと違い今度は2つの違う筋肉をバランス良く変化させなければならないことになります。とても大変なことです。デクレッシェンドでは声帯の厚さを徐々に薄くしていきますが、その時に声帯を引っ張っている力も同時になくなりやすくなります。そうなると音程が下がってしまったり、音が途切れてしまったりします。徐々に力を抜くのは力を入れるよりもずっと難しいものです。

それ以外のこと

 それ以外にも明るい声が良いとか、深い声が良いとか色々な基準が考えられますが、圧倒的にこの3つが大切です。ある程度楽にという条件は付きますが、この3つが網羅できている声は無条件に良い声ですので、他のことにあまり惑わされない方が良いです。先ほどの明るい声と深い声は対立する要素にもなるもので、そうなると明るくて深い声は存在しなくなります。ただ明るい声も深い声も定義があやふやですので、定義の仕方によっては明るくて深い声は存在します。少しややこしい話になりましたが、もう少しこの話を進めると、明るくて深い声があるような明るさや深さは良い声の条件になり得ますが、明るくなると深さが減ったり、深くすると明るさが無くなるような、明るさや深さの声は価値がありません。こだわらない方が良いです。このように明確ではないものはまずは考えない方が良く、単純にこの3つに集中した方が良いです。

確認

 最初の声門閉鎖が出来ないと声が出ませんが、そうでなくとも少し問題があれば、音の立ち上がりや音が消える前に音にならない息だけの状態ができます。この時には最初の声門閉鎖に問題があります。音域はわかりやすいと思います。楽に変化させられるというもの重要な要素です。3つめの音量の変化は難しい事が分かると思います。広い音域で無理なく安定した音質で音量を変化させられるかどうかを確認していきます。