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マスケラで歌う事~発声のしくみ71

マスケラとは

 イタリア語でレッスンを受けると、マスケラで歌うようにと言った指示が来る事があります。マスケラは仮面の意味です。そして、マスケラで歌うというのは鼻の付け根に響きを感じるという事になります。日本人から考えると、仮面は顔全体に付けるのに、鼻の付け根だけというのは少し変な気もしますが、仮面舞踏会では目と鼻だけの仮面をよく付けていましたので、イタリア人にとっては鼻の付け根という方が自然なのだと思います。

最初の練習

 このようにあまり聞き馴染んでいない用語が出てくるととても特別な事のように思えるものですが、初心者の歌のレッスンでまず最初に鼻のところに響きを感じてと言われるのと同じことです。ですので、しばらくレッスンを重ねた人がマスケラに音を感じてといった指導をされるとしたら、全く出来ていないという事ではなく、さらに強化しようといった意味合いになります。全く出来ていなければ歌う事がとても困難になりますので。

 マスケラで歌うと言う事はとても基本的な事ですので、レッスンで何も言われなければ、ある程度は最初から出来ているという事になります。出来ていなければ、マスケラという言葉では無いにしろ、何らかの練習が始まります。

マスケラの2種類の見方

 ところでこのマスケラには2つの違った意味があります。1つは位置として鼻の付近の高さにある事。2つめは鼻の付近に音を集めるという事。この2つは似ているように感じられるかもしれませんが、明らかにに違う機能ですので、分けて考える必要があります。

 ある程度声楽の経験のある人は簡単に感じられる事だと思いますが、しゃべるときの声は口から出ているように感じられるのに対して、歌の声はそれよりも高く、鼻の付近に響きを感じられます。そして特別の声楽の経験はなくても、同じように感じる人は多いのではないでしょうか。これは声楽の世界では「喉を開ける」と言っていますが、声帯が良く引き伸ばされたときに感じられる現象です。そしてこの機能は初心者であっても絶対的に必要なものです。これが出来ないと歌うための楽器が出来ていないようなものです。楽器として機能するためにはある程度の音域で音程を自由にそれほど無理をせずに変えられなければならないのですが、それが可能かどうかという事になります。ですので、初心者でもこれに問題がある場合はまず最初にクリアしなければならない問題になります。

 これに対して鼻の付近に音を集めるのは音量の問題になります。声帯が強く閉じられると大きな声が出ます。この時に鼻の付近に音が集まったように感じます。これも大事な事ではありますが、最初にクリアしなければならない問題ではありません。大きな声が出なくても音域が広ければ、歌は歌えます。順番は大切です。

マスケラの練習

 順番は大切です。マスケラの話が出ると、一生懸命鼻の方に音を持っていこうとしますが、声帯が引き伸ばされると自然に鼻の方に響きを感じるようになるのです。マスケラの練習が十分に出来た人はマスケラに音を持っていこうと頑張る事はありません。どんな声を出しても既に音はマスケラにありますので、それ以上にもっとマスケラに持っていこうとする必要などないのです。逆にまだ上手く出来ない人にとって鼻の付近に響きを持っていこうと練習をしたときに上手く行くかどうかはよく分かりません。上手くいかない例としては「鼻にかかった声」になる事が挙げられます。鼻にかかった声はなんとなく想像できるかと思いますが、マスケラに音を持っていこうとして上手くいかないときに、声帯を短くした状態で一生懸命引き伸ばすと浅い薄っぺらな音、しかししっかり音量のある声が出ます。このような声を鼻にかかった声といっていますが、問題がある状態の1つです。ですので本来なら喉の開いた声が出せるようにして、その結果として鼻の付近に響きがあるのかの確認に使うのが一番良いように思います。ただし鼻のところに声を持っていこうとしつつ、先生の声をまねして練習すると、上手くいく事も十分にあります。先生の声があってはじめて成立することもあるので、知識だけでなんとかなるものでもないところもあります。良い発声が出来ているかどうかの確認にマスケラの考え方はとても有効です。

フースラー

 ちなみにフースラーの中ではアンザッツとして表現されていて、マスケラは3番のアンザッツになります。マスケラの2種類を3Aと3Bで表しています。

フースラーのアンザッツ(あたり)の発声での実践~発声のしくみ59