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フースラーのアンザッツ(あたり)の発声での実践~発声のしくみ59

アンザッツについて

 上の図のようにフースラーはアンザッツ(あたり)を分類しました。このような分類は使い方によってはとても便利なのですが、変に使うと逆効果になってしまいます。ここではどのようにアンザッツを利用したら良いかを考えてみます。分類されると、ある人は1番で歌っているとか、別の人は2番で歌っているとか考えてしまうかもしれませんが、そうではありません。どんな声であっても良い声はすべての「あたり」が生かされており、その音質により、どこかがより強く働いたり、弱く働いたりして、バランスを変化させているだけのものです。

フースラーのアンザッツについて

 まずアンザッツはフースラーの発見では無く、今までの声楽指導の現場で扱われていたアンザッツ(あたり)を体系づけたことと、その時の声帯の状態と声の関係をはっきりさせたことに特徴があります。しかしこのように分類されてしまうと、正しい1の状態、正しい2の状態を会得しなければならないような気になってしまいますが、そのようなものではありません。ましてやどこが一番大切だとかどこは重要では無いとかいったこともありません。練習の順番も重要ではありません。大抵の発声レッスンでは最初に3の位置を練習することが多いようですが、人によってはそうではない方が良いことも多々ありますし、最終的に3を中心に歌うこともありますので、最初も最後もありません。さらにこの分類が本当に正しいのかということも考える必要があります。このことについては最後に書きます。

3,4,5番のアンザッツ

 ここでは3,4,5番のアンザッツのみを考えてみます。3番だけ2種類あってややこしいのですが、aは柔らかい音、bは強い音と考えます。図で書くと場所が違うように見えますが、基本的に強さです。強い音が出ると音は自分の近くに感じますので、上の歯の付け根付近に感じられ、弱い音は自分から離れて感じられますので、鼻の付け根に感じられます。考えやすくするためにここでは3bのみを取り上げます。つまり3b,4,5のみを考えます。

 まずはこの3つのアンザッツの違いです。4番は一番声帯が薄くなった状態です。その代わりに声帯の閉鎖がとても弱くなります。とてもファルセットに近い音質になります。この状態から声帯の閉鎖を少しずつ強くしていくとアンザッツは徐々に額の方に移動していきます。これが5番です。閉鎖が強くなりますので、4に比べると声帯の張力は少し損なわれていきます。5番になっても声帯はまだしっかりと厚く閉じられていませんので、もっと厚みのある音が出るように声帯を閉じていきます。そうすると額からさらに鼻の付け根(3bにアンザッツは移動して感じられます。もちろん4の声帯の張力もだんだん弱くなっていきます。しかし、とても力強い音を出すことが出来ます。このような関係なので、4があるときに突然5になり、また突然3になるわけでは無く、徐々に変化していくことが分かります。それだけでは無く、4の感じがありながらの3の音のようにも感じられます。こうなると位置による分類はほぼ意味が無いようにも感じられます。

3番のアンザッツの中での変化

 もう少し感覚的にわかりやすい例を挙げてみます。鼻の付け根あたり(3b)に声を感じることは容易ではないかと思います。一番出しやすい高さの声を出して、そこから少しずつ音程を上げていくと、鼻の付け根に感じられる音が、音程が上がるにつれてほんの少し上がっていくのを感じられると思います。つまり3のアンザッツは固定された同じところにいつもあるわけではなく、音の高さに合わせて変化していきます。3の音がより頭声的になると5に移動して、さらに高く、柔らかい音になると頭頂4の位置に感じられます。分類が絶対的なものでは無いことが理解できると思います。

アンザッツの問題点について

 3,4,5を比較したときの位置が固定されたものでは無いこと以外のフースラーのアンザッツの問題点を少し挙げてみます。3番のみ、閉鎖の強い状態と弱い状態のa,bがありましたが、2番、6番にも同じように閉鎖の強い状態と弱い状態が考えられます。特に2番は力強い胸声を出すときに必要だと感じられると思いますが、しっかりしたファルセットを出すときにも強く2番が働いていることに気付くと思います。これは分類しないと分かりにくいですね。さらに6番も柔らかい音と力強い音の両方が感じられます。4番は力強く出すことは不可能で、強くなると3の方に移動もしくは3が混ざったように感じられます。3aの柔らかい声は4番ほどの声帯の張力はありませんが、それでも声帯はしっかりと薄くなります。4から3aに移行するにはなめらかには変化させづらいですが、3aから3bだと簡単に移行できますので、3a3bを変化させることにより、音楽の強弱を容易に変化させることが出来ます。こうなると3a3bの練習だけでも良さそうですが、その人の一番薄く引き伸ばされた声帯は4の練習をしなければ獲得できませんので、やはりそれぞれ大切のものになります。

1番のアンザッツ

 今回触れなかった1番は声が奥にこもっているとか前に出ているとかの違いに影響します。1番がしっかりしていないと、モコモコとした言葉が聞き取りにくい声になります。逆に他の部分がとても弱くしか働かない状態で1番が強調されると、薄っぺらな表情の無い声になります。そして面白いことに6がしっかりすると、1も自然にしっかりしてきます。2と4に関連性があったように、反対の部分は共同して声を作っていきます。なんとなくアンザッツのことを理解していただけたのではないかと思います。具体的な練習例はまた別の機会に書きます。