発声指導者の立場から、レッスン時のヒントをいくつか書こうと思います。
発声の知識がしっかりあり、また経験もある程度ある指導者であれば、
生徒さんの声を少し聞いただけで、長所短所、
長い目で見たときの課題と直近の課題はすぐに分かります。
後はどのような方法を使ってレッスンを進めていくと良いか、
ということを色々と考えます。
さらに必要な課題に対する練習方法もいくつか持っており、
何が適切か、またどのような順序、
どのくらいの完成度を目標にするか等々を考えつつレッスンを進めていきます。
頭の中は結構忙しいです。

レッスンを受けることは本当は結構難しいことだと思います。
まずは全体像が見えない中での練習になりますので、
本当に今の練習は必要なことなのかなど考えてしまうこともあるかもしれません。
しかし、先生はさらに良い声にするために力を尽くします。
これを信じてすべてを受け入れることがスタートだと思います。

レッスンは生徒さんのレベルに関係なく、
同じエネルギーで進めていきます。
ここに疑問があるときは、
残念ながらあまり良い先生ではないかもしれません。
実際のレッスンでは、生徒さんの課題に対して解決に向かうように、
時には説明しながら、時には説明なしに実践しながら、
時には少し遠い練習から少しずつ必要なところに向かうように等、本当に色々な手を使います。
今までの経験で使ったことのある練習を使うこともあり、
時にはその場で思いついた練習を試すこともあります。

それぞれの練習は手を使ったり、体を動かしたり、
声のあたりの位置や、声帯の状態を想像したり、色々な練習がありますが、
上手なレッスンの受け方として、
まずはすべてをできるだけそのままマネをすることをおすすめします。
単純なことですが以外と大切です。
私がたくさん体を動かしたり、しっかりと手を使っているのに、
ほとんど動かない生徒さんが時々いらっしゃいます。
原因はそれぞれです。腰が痛かったり等の身体的な問題でその動きが難しいケース。
体を動かすことになれておらず、自然に動けないケース。
動かないように歌う方が良いという思い込みが強く、動けないケース。
慣れないレッスンで恥ずかしさが先に立ち動けないケース。
色々と問題があることもあるかもしれませんが、
それでもできるだけまねした方が練習は進みやすいですし、
身体的な問題等で上手くいかないときは早くにそのことを先生に伝えた方が良いでしょう。
他のやり方に切り替えることもあります。

たいていの発声練習は最初に先生の手本があり、
それをまねするといった形が取られますが、
まねが上手くいかない人の特徴として、
先生の手本の時にほとんど見ていなかったり、
手本が終わる前に声を出し始めたりすることも多いです。
まずは観察です。
同じような練習を繰り返していくと、
体を動かすことや手をつけることにも慣れていくと思いますが、
さらにこの段階でもまた観察する必要があります。
たとえば手をつけている場合、
先生の手がぴんと伸びるまで使われているか、
逆に最後まで肘が曲がったまま、
体からあまり手が離れない使われ方をしているか等もまねしていきます。
この二つも練習の目的が違っています。
もし同じような音形の練習で、
先生の手の形が違う場合は、
練習の目標が違っていることが多いです。

そしてさらに大切なことが、
先生の声をまねすることです。
先生の手本が速く歌われているのにゆっくりと歌ったり、
逆だったり、強めに先生は発声しているのに、弱いままだったり、
クレッシェンドしているのに、同じ音量のままだったり、
上手くまねができていないケースもよくあります。
たとえば、いつもに比べて生徒さんの声帯の伸展運動が弱い場合に、
喉を開ける練習をする必要がありますが、
ドミソミドのような3度5度動く音形を素早く勢いをつけて発声することにより、
自然に喉が開いていくようにすることがあります。
いつもはもっと開いていると思った場合、「もっと開けてください」と言わずに、
この音形をさらに速く歌ったり、
少し軽い音色で歌ったりすると、生徒さんがまねしてくれるだけで、
自然と開いた喉を作ることができるようになります。
ここに言葉の説明を入れた場合、喉の開けるという言葉が先行してしまい、
声帯の伸展運動は動かず、息漏れになったり、
不必要なところに力が入ったりすることもありますので、
音をまねしてくれて、自然にクリアできた方がずっと良い結果になります。
その後で「今の練習は何の目的だったのですか」という質問をしてみても良いかもしれません。
すぐには上手くいかない練習メニューだったとしても、
とにかくひたすらまねをしてみてください。
上手くいかない場合、先生側で上手くいくように練習を進めたり、
別の練習を先にやってみたりしますので、
とにかく任せてまねをすることが一番です。
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