全音のイタリア歌曲集では2曲目に入っているMonteverdiのLasciatemi morireです。声楽の勉強をしている人は、割と早い時期にほとんどの方が歌った経験があるのではないかと思います。今回は最高音の移り変わりからこの曲を考えてみたいと思います。歌の声部のみ見ていきます。最高音は第5線(一番上の線上)のファ、最低音は第1間(一番下の2つの線の間)のファです。
最初のフレーズの最高音は2つめの音符にすぐ現れて、レ♭です。曲の最高音がファなので、すでに結構高い音に達しています。緊張感のある曲だと思えます。直後すぐに音は下がりだし最低音に近いソの音まで行きます。
次のフレーズがレ♭を超えると音楽はさらに緊張に向かい、超えなければ一端緊張感は薄れていきます。この曲では2つめのフレーズでさらに高い音に向かい最高音のファに達します。直後最低音のファまで下がっていきます。ここまで来ると音楽は方向を変えなくてはならなくなります。
中間部は最低音のファから始まります。一端音楽が落ち着いたことが分かります。ここから8小節かけて徐々に上がり続けていきます。この8小節を音の骨組みだけで見ていくと、7小節目ファ、8小節目ソ、9小節めの最後目ラ♭、10小節目シ♭、11小節目ド、13小節目レにたどり着きます。音階をじりじりと上がっているのが分かります。もちろん骨組みだけでは音楽の面白さは足りないので、飾りが付きます。
シューベルトは高い音に向かってデクレッシェンドすることについて~声楽曲19
7小節目はドラ♭の音がなければ骨組みの音だけで始まります。11小節目からの2つのフレーズは他の音を色々と加えています。目的のド、レの音に向かって下から、上からの両方でアプローチしていき緊張感を高めているのが分かります。7小節目のドラ♭の音は弱拍で動くことによりとりわけ目立ったり、中心になる音を見失ったりはしないものの、これから始まる大きなドラマの予感を暗示している動きだと言えます。本質的な音楽の方向性には関係ないものの、ここがファ、ソだけの音だった時と比較すると、音楽の面白さが全然変わってきます。
このようにフレーズの最高音が2度ずつ上がっていったり、下がっていったりして作られている曲はたくさんあります。最高音の推移で曲を観察してみました。
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