自分に合う曲はどんな曲だろうかと考えたり、果たして今練習している曲は自分に合っているのだろうかと考えることはよくあるのではないでしょうか?また先生からこの曲はあなたに合っているから練習してみなさい。また逆にこの曲はあなたには合わないから止めておきなさいと言われることもあります。今回はこのことについて考えてみます。
まず少し極端な例から見てみます。例えばメゾソプラノの人が、ソプラノのアリアを歌いたいとか、バリトンの人がテノールのアリアを歌いたいとか思うことは有り得ると思いますが、そのままではどうしても出せない、もしくは苦しくなってしまう音が出てきます。合わないから止めておきなさいと言われる例です。似たような例で、やっとで高いA(ラ)が出せるようになったテノールが、ハイC(その上のドの音)の出てくるアリアを歌いたいと思う場合ももう少し待った方が良いとなります。
少し違う例を出してみます。今度はすべての音が歌える音域に入っている場合です。まだ喉が弱いのだけれども長かったり、フォルテで歌うシーンが多い曲を歌いたい場合。軽い声なのに重さが要求される曲を歌いたい場合。このような場合にもあなたには合わないとか、まだ合わないといった表現をされます。
基本的に全曲通して歌うことが出来ないとか、歌うことで声帯に無理がかかり、喉を壊しかねないときに合わないといわれることになります。気持ちは分かりますが、先生としては喉を守るためにストップをかける責任があります。ドクターストップのようなものです。
では逆に重い声質の人が軽い曲を歌う場合はどうでしょうか?この場合は喉に無理があるということはありませんが、それでも合わないと言われてしまうことがあります。これは喉を守るためではなく、この曲では試験やコンクールで良い点がつかないという意味になります。似たような例では、レガートがきれいに歌えない場合には、速めの曲でフレーズが短いものにしたり、逆に速いパッセージが上手くいかなければ遅い曲だけにしたりということも考えられます。これらのケースでは果たしてそれで良いのだろうかという疑問が出てきます。直近の試験では良い点数になるかもしれませんが、レパートリーが広がらないことになってしまいます。
ここで2つの違った例が出てきました。一つは喉に無理がかかるドクターストップのようなケース。もう一つは試験等でよりよい点数を出すための選択です。この2つは明確に区別をした方が良いです。特に後者の場合は直近の試験等では点数の出る曲を選んだとしても、合わないとされる曲も練習すべきです。そして重い声なのに軽い声も使えるようになったり、速い曲も遅い曲も歌えるようになったりすることで、表現の可能性は格段に広がります。レッスンではあなたにこの曲は合わないからこっちに変えなさいと言われて終わってしまうところですが、しっかり自分で区別をして、必要な練習は自分で進めていく事が大切です。
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