男性のテノールの音域は通常ト音譜表で下に下線を1本引いたC(ド)の音から、2オクターブ上のト音譜表の上に加線を2本引いたハイCまでといわれています。実際はもう少し低い音も出てきますので、あと3度ほど低い音からハイCまでといったところです。さらに女性より男性は1オクターブ低いので、すべての音を1オクターブ下げた音域になります。女性と同じ楽譜にしたら、ト音譜表の第3間のC(ド)が最高音で、そこから2オクターブ下に広がるということになります。高い音が苦手な女性が丁度この音域に当てはまりますので、女性なのに自分はテノールではないかと思うこともあるようです。
なるほど面白い考え方だと思いましたが、テノールは男性の高い音という定義になりますので、音域が一致するからといって女性のテノールはありません。女性で声が低ければアルト、またはコントラアルトということになります。ただこのアルト、コントラアルトはともにとても珍しい声で、めったにはいません。大抵低めの声でもメゾソプラノに分類されまずが、この声もすくなく、たくさんの人がソプラノです。音大に行くと声楽科の男性はとても少なく、圧倒的に女性が多いものですが、その中でメゾソプラノはほんの少しになります。他はソプラノですので、ソプラノだらけというわけです。
声種はすべての声区を練習した後で考えれば良いです。早くに決まってしまう人とも決まらない人もいますが、決まらない良さもありますので、決まらなければ決まらないままで良いです。
しかし、音域だけ考えるとテノール音域が一番当てはまると思うことも多いことだと思います。これはなぜかというと頭声を使っていないからです。本来ならばあと1オクターブくらい高い音が頭声区を使うことによって歌えるはずなのですが、使い慣れていないためにそれが丸々無くなってしまった音域になってしまうのです。これが丁度テノールと同じ音域になるのが面白いところです。
ソプラノだとかアルトだとかの声種を決めるのは今どのくらいの音域があるかで決めるものではありません。胸声も頭声も練習してどの音域が歌いやすい声になるかというところで決まっていきます。テノールの音域だと思う方は女声でいくとコントラアルトに当たるでしょう。それでも第4間のE(ミ)位までは使いますので、テノールという結論になってしまうようですが、頭声も練習してみないと答えは出ません。それから声種を決めること自体大きな意味はありませんので、急いで決めることはないと思った方が良く、さらに早くに声種を決めることにより、それらしい声を出そうとして声をゆがめたり、それ以上の可能性をなくしてしまうことにもなることがあります。
レッジェーロ、リリコ、スピント、ドラマティコと声帯~発声のしくみ37
これとは別に合唱団でテノールのパートが弱い時に、アルトの数人が1オクターブ下でテノールを手伝うこともあります。本来ならばあまり良いことではありませんが、仕方が無いこともあるかもしれません。この時も自分の声はテノールなんだと思わずに一時的に手伝っているだけだとしっかり把握しなくてはなりません。また長期でこの状況を続けるのは声にとって良くないですので、できるだけ速く改善できると良いです。また発声の時間にきちんとアルトの音域の声を出したり等の工夫も必要です。
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