声帯はのど仏の中にあります。この声帯を微妙に変化させることにより、音程を作っているのですが、とても繊細な作業をしています。1~2cmの声帯を操作して正しい音程で歌うのですから、大変なことです。今回は音程が変わるときに声帯はどのように変化するかを書いていきます。
音程の変化は声帯の状態の変化でのみ作られます。お腹の使い方も共鳴も関係ありません。そして、声帯の状態の変化は弦楽器やピアノの弦を想像していただけると分かりやすいです。ヴァイオリンの音程を変える方法は3つです。
1つは糸巻きを締めたり緩めたりする、チューニングするときに使われる方法です。声帯では喉を開けると言われている運動です。声帯はピンと張った状態になり、きれいな振動になります。
2つめは長さの変化です。弦の途中を指で押さえて、振動する弦を短くすることにより音程を変えます。声帯は途中を押さえて声帯の振動する部分を短くしたりは出来ませんが、声帯の両端は固定されていませんので、1番の運動が起こると同時に、声帯はやや長くなります。薄くなると音は高くなり、長くなると音は低くなるので、コントロールはとても繊細です。これに関しては輪ゴムの張力を変えながら指ではじいた感じに近いです。ただし、輪ゴムを引っ張るように声帯は長さを自由に変えられる物ではなく、気管の中に収まる範囲で、ほんの少し傾けることによって変化する程度の長さの変化以上に変えることは出来ません。ですので長さの変化で音が下がるよりも、薄く引き伸ばされることにより高くなるとシンプルに考えても良いように思います。輪ゴムを引っ張りながらはじいてみて音程の変化を観察してみると、確かに長さは通常より何倍か長くなりますが、音が高くなっていきます。
3つめは弦を太くしたり細くしたりすることです。これは簡単にはできませんので、元々4本の違う太さの弦を張っておいて、弾くときに弦を替えることによって音程を変えています。声帯ではふれ合っている部分の面積を変えることにっよって、太い声帯にしたり、細い声帯にしたりします。そしてもう一つの特徴は張力を増して音程を上げるよりも、弦そのものを細くした方がもっと音程を高くする効果があるということです。
1と2は同じ筋肉を同じように使いますので、1,2の方法と3の方法の2種類を使って音程を変えていることになります。1,2の方法は割と簡単に自由に音程を変化させられます。発声ではまず最初に出来た方が良い練習になります。レッスンでは初日にほとんどの方がこの筋肉の変化と音程の変化が分かるようになります。しかしこれだけだと1オクターブほどの音域しか歌えません。そこで声帯のふれ合っている面積を変える3番の運動が必要になってきます。これも本来なら無段階に自由に変化させられるはずですが、結構難しいです。これが出来るようになると音域は2オクターブ以上に広がりますが、スムーズに変化させられないと、チェンジの部分で、大きな音質のギャップが起こります。このようなことが多々あることから、この厚さの変化がなかなか自由にならないことが分かると思います。少し低い音程から歌い始める演奏を聴いたことはあるでしょうか?これは声帯を厚くふれ合うように準備するために使われる方法です。もちろん音楽的に良い方法ではありませんので、多用すべきではありませんが、声帯の厚さの変化がなかなか自由にならない証拠だと思います。
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