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フースラーのアンザッツ2番について~発声の仕組み31

フースラーの「うたうこと」より

 フースラーのアンザッツの中で2番のポジションが一番わかりにくいのではないかと思います。本ではこの「あたり」の場所を「肋骨の最上端」と説明してありますが、鎖骨の間と感じた方が良いと思います。肋骨の最上端の少し上の骨のない部分、柔らかい部分です。この部分と胸に声を座らせるといった時の肋骨のやや上側を分けて考えた方が良いように思うのですが、フースラーの本では混ぜてしまっているように思います。ただし森先生のレッスンでは明らかに鎖骨の間の練習と胸に座らせる練習は別物でしたので、フースラー自身も分けて考えていたのか、その後改良が進んだのか分かりませんが、とりあえず分けて考えないとややこしくなってしまいます。

 ちなみに胸のポジションは「アー」と発音しながら肋骨の中央を上から下へ軽くたたいていくと声がペコペコと反応するところがあります。その部分です。胸声と言われる声の所以です。分類上の問題になるかもしれませんが、みぞおちや、背中の下部のへこんだところに感じるような呼吸のポイントの部類なので、「あたり」としなくても良いかと思います。ここに強く音を集めていくと、声帯の閉鎖の強い厚い音が作られます。胸声を出す時にはとても重要な場所です。イタリアで、appoggiare la voce(直訳で寄りかかった声)を作るために、colpo di petto(直訳で胸への打撃)の練習をしたりしますが、これがこの部分です。またイタリアの音楽を歌う時に、少し低めの音程から音をつかんでしっかりした歌い方をする人がいますが、この部分を強調する発声のためにあの独特な歌い方があります。時に有効ですが、常にやられてしまうとどうかなと思う発声です。フースラーの本ではこの声について書かれているように思えますが、もう少し上の「あたり」を考えてみます。

鎖骨の間の「あたり」は決して声帯の閉鎖の強い音ではありません。しかし、鎖骨の間に音の通り道のようなものを感じ、そこから安定した音の流れを作る。またさらにそのポジションを少し下げていけるようになると、非常に良く引き延ばされた声帯を準備できます。最低音を出す時にこのポジションがうまく使えると、押しつぶしたような音ではなく、ゆとりのある良く開いた深い音が出ます。さらにこのポジションを残したまま、最高音まで上がっていくと、よく喉の開いた、しかし無理のない柔らかい高音を獲得できます。最高音、最低音の練習には不可欠であり、また高音と低音には発声的に似ているところがあるとか言われるのもこのためです。

 このポジションが働くことによって、輪状甲状筋が働き、逆に結うと、輪状甲状筋が働くことによって、鎖骨の間に音の通り道のようなものを感じることが出来ます。そのため声帯はしっかりと伸展させられ、極端な高い音低い音であっても、声帯の伸展の無くならない、つまり開いた喉で歌うことが出来るようになります。

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