発声で必要だといわれている事はいろいろあります。こうでなければ、またこうであってはいけないといわれる呼吸や共鳴や姿勢等、もっともらしく、しかし漠然として頼りない方法が多分に一人歩きをしていて、頭や体が混乱するといった経験はよくあることではないかと思います。
しかし声を直接作っているのは当然声帯なので、声帯の運動抜きに呼吸や姿勢等の話をしても間違ったものになってしまう危険性があります。(呼吸や姿勢は発声においては声帯の動きにどのように関与するかということに結びついて初めてその重要性が出てきます。)
お腹や姿勢を気にしすぎて声を聞いていないこともよくあります。
さて本題ですが、頭声、胸声といった声区が発声では良く話題に上りますが、これは声帯の基本的な状態の違いによる音質の差です。本当によい頭声や胸声という話は別のところで考えるとして、少し大ざっぱな表現になってしまいますが、頭声では声帯を薄く引き伸ばす力(甲状輪状筋等の伸展筋)が強く働き、胸声では声帯を厚く強く触れ合わせる力(声帯筋)が働きます。よって頭声では細い弦を振動させるように、高い声が出しやすくなりますが、それだけでは細い弱い音になってしまいます。一方胸声では高い声が出しづらく、しかし太い大きな声が出ます。(厳密にはその他の筋肉も関係し合って、音質が変わりますが、ここでは簡単に話をさせて頂きます。)
そして実際は頭声であっても胸声的なものが混ざり、胸声であっても頭声的なものが混ざることにより、バランスが取れ、自然に音量や音程,音質を変化させられるようになります。さらに、頭声から胸声へ、また逆にも自然に移行できます。声区に関してはこちらもご参照ください。
少し難しい話になりますが、ここで一つ重要なことがあって、これらの筋肉は別のものであり、影響を及ぼし合うけれども、ある程度独立して動くということです。そして良い声を作る条件としては、これらの別の働きをする筋肉が、常に共に働いて、自由にその度合いを変えられる柔軟性を持つこと、または反対の筋肉が強く働いても他の要素が崩れずに安定していること等があげられます。
声帯は常にある程度引き伸ばされていないといけません(喉を開く)。しかし、この引き伸ばし筋と声帯の厚さを変える筋肉(声帯筋)は独立して使えますので、声帯を厚くしたまましっかり引き伸ばすことも可能です。低い良い音はこの状態で出来ますし、とても力強い高音も同じ声帯の状態で作られます。
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