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「顎に力を入れてはいけない」を考える~常識を疑う18

 レッスンで「顎に力が入っている」と言われた経験のある方は結構多いのではないかと思います。誰もが疑わない正しいことのようでもありますが、少し考えてみます。

 力が入っているという以上は筋肉と言うことになりますが、おそらくこの場合甲状舌骨筋を指すと思われます。下顎と甲状軟骨をつなぐ筋肉です。発声のしくみ1に図を載せています。音を高くするときに甲状軟骨は輪状軟骨の方につまり下向きに傾く必要があります。このときに甲状軟骨を下向きに引っ張る力、輪状甲状筋や胸骨甲状筋が働きます。そしてこれらの筋肉に対して上向きに引っ張る筋肉が舌骨甲状筋になります。下向きの筋肉しかなければ甲状軟骨は下向きに引っ張られっぱなしでコントロールできませんので、当然上向きの力、舌骨甲状筋もとても大切なのです。

 結論から言うと、顎の下の力も必要なのです。全くない方が良いものではなく、他の筋肉同様正しく、バランスよく使われることが必要なのです。では良くないとされる「顎に力が入る」とはどういうことなのでしょうか?高い音を出すためには甲状軟骨はどうしても下に傾かなくてはなりませんが、下向きの筋肉の力が十分ではないときに舌骨甲状筋が上から甲状軟骨を抑えてしまうのが「顎に力が入る」と言われる状態です。つまり顎の力が問題なのではなく、下向きに引っ張る筋肉が正しく動いていないことが原因なのです。

 練習では顎の力を抜くことではなく、下向きの筋肉を使うことが大切なのです。発声のためにはいろいろな力を入れなければならないのですが、なぜか力を入れることよりも、力を抜くことが重要視される傾向にあるようです。しかし、輪状甲状筋や胸骨甲状筋が正しく動き出せば、顎の力は抜こうと思わなくても、正しい舌骨甲状筋の動きに変わっていきます。このときにも、正しく顎に力が入りますので、本当に力を抜いてしまうのは正しくありません。

 生徒さんにも「顎に力が入っている」と言われるだろう状態でいらっしゃる方は結構多いです。レッスンでは一切顎の力を抜くように指示したことはなく、必要な筋肉を使う練習のみやっていきます。すぐ出来る方も時間がかかる方もありますが、結果皆さん問題なくなっていきます。顎の力を抜いて歌おうと思う努力は必要ないように思います。