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発声でチェックする項目~練習例10

 日々どのような発声練習をしていくか決めていくことは大切ですが、難しいことです。これをどのように考えていったらよいかを書いてみようと思います。

体の準備が出来ているか

声楽家にとって体がそのまま楽器になります。しかし体の状態は日々変わってしまいます。声帯の疲労や声帯付近の筋肉の柔軟性。体の疲れやこり。精神的な不安や疲労など。色々なことが発声には関与してきますので、完璧な体の準備は出来ないと思った方が良いでしょう。神経質になりすぎず、しかし疲れている時にはストレッチをしたり、まずは体を温めたり、こりのあるところを少し動かしたり等の準備は出来るかもしれません。これに関してはまた改めて書いてみようと思います。

声帯の伸展

声帯の伸展筋が活発に運動出来ているかの確認します。歌を歌う時と日常生活での一番の違いはここにあります。筋肉の動きが把握できている人は声を出さなくとも確認が出来ます。詳しくは「喉を開く」に関する記事を読んでみてください。

深い呼吸

息が深くためられると、息の流出の安定や声帯付近の筋肉の柔軟性が増します。「深く息をためる」で書いています。

横隔膜

横隔膜は日常生活でも使っていますが、強さや繊細さが違いますので、そこを確認していきます。横隔膜についてはあちこちで書いています。イメージがつかみにくいかもしれませんが、色々な角度から書いていますので、こちらの記事を読んでみてください。

声門閉鎖

声帯の後の閉鎖と声帯の中央の閉鎖の2つがあります。後の閉鎖は常に必要で、中央の閉鎖は音量の変化に合わせて自由に変化させられる必要があります。これが上手くいかないと息っぽい音になったり、ざらついた音になったりします。やや難しいですが、「発声のしくみ」を参考にしてください。

声帯の伸展、閉鎖が横隔膜の動きと連動しているか

個別の声帯の動きは横隔膜との連動無しにはあり得ませんが、より積極的につながっているかの確認をします。

中間域が安定し、母音がクリアになっているか

変な揺れがないか、音程が安定しているか、長く伸ばすことに無理が無いかの確認と、すべての母音が明確に聞こえるような発音が出来るかの確認をします。安定の確認は柔軟性を損なうことにもなりやすいので、柔軟性のある中での安定の確認が必要です。

音域の確認

最高音から最低音までむらなく出せるかの確認をします。曲の練習だけだとすべての音域を使わなくなりますので、発声では最低音も含めて全音域の確認をします。

思ったような表現が出来るか

出したいと思う表情の音になるかどうかの確認をします。これが問題なければ感動的な素晴らしい演奏になります。

舌が堅くなることについて~声の診断16

 

 項目で分けてみました。当然必要だと思われることを並べて書いてみただけですが、色々と便利かもしれません。それぞれの項目のいつもの自分の状態を知っていると、今日の自分の状態が分かります。首が少し張っているせいか声帯の伸展がいつもと違うとか、疲れているせいか横隔膜の動きがいつもと違うといった具合です。修正できるようでいたら修正し、難しいようでいたら、今日はそこに問題があると把握したままで、練習を続けていきます。問題のあるカ所だけに固執せず、意味のある練習が出来ると思います。

 練習に当たっては常に近い目標と遠い目標を持った方が良いのですが、それもこれらの項目に分けて考えると目標が具体的になっていくかもしれません。例えば音の不安定な状態をやや遠い目標として練習していきます。そこで伸展筋の練習をした時に安定感が変わるかの確認をしてみます。変化が見られたら、この2つをセットにして日々の変化をチェックしていくと少しずつ進歩が見られるかもしれません。また、息をより深くためる練習をして変化があるかどうかをチェックしてみます。関係ないと思っていてももしかすると息が深く溜まることにより、上半身に無理な力が入らなくなり、音の安定感が増すこともあります。安定させようとだけしていくと喉に力を入れて動きを止めようとしがちですが、このことが喉の日常的な硬直を生んで、音の不安定な状態を作り出していたという事でしょう。また、声門閉鎖をいつもよりしっかりさせてみます。そこで安定感が増したとすれば、脱力しようとしすぎたことが音の不安定さを作り出していたのかもしれません。

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