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のどで歌ってしまっている~発声の考え方7

のどで歌っている

 良くない発声として、のどで歌ってしまっていると言われることがあります。とても変な表現です。のどで歌わない声はどんなものかと聞きたくなります。言葉としては当然間違っていますが、無視してしまうだけだと何も生まれないので、少し考えてみます。

マラソンと野球の例

 オリンピックのマラソンを見ていたときに、足で走っていますね。と解説されていたのを聞いたことがあるし、野球でピッチャーが投げるときにも腕で投げてしまっていますね。と言われることもありますので、歌に限ったことではありません。当然マラソンで足以外で走ることは出来ないし、ピッチャーは腕を使わずにボールを投げることは出来ません。これらの共通点は、声では声を作る一番最後の部分、声帯に無理がかかっているということだし、マラソンや野球の例でも、一番最後の一番効果を生み出す部分に負荷がかかりすぎていることを指します。暗黙の了解でこのことを理解しているので、あまり違和感を感じずにこの変な表現を受け入れているわけです。

解決策

 表現はおかしいのですが、良くない状態ではあるので解決策を考えていきます。マラソンの例で考えると、足を使うことが悪いのではなく、足を動かすためにもっと遠くにある筋肉がしっかりと使われなければならない。という意味だと考えられます。声でも同じことで、声帯を使わないようにするのではなく、外喉頭筋やお腹や背中の筋肉などが声帯の動きを助けるように働く必要があります。まずは決して声帯を使わないようにするのではないということをはっきりさせる必要があります。声は声帯の閉鎖と伸展のバランスで作られますので、それらをのどの中だけではなく、遠くにある筋肉が手伝ってくれる状況にしていく必要があるということです。

お腹に力を入れる

 のどで歌ってしまっていると言うときに、そうならないようにお腹をしっかり使うようにと指示されることもあります。間違いではありませんが、お腹に力を入れてみたらもっと違和感を感じてしまうこともよくあります。難しいところです。お腹に力を入れることが声帯の閉鎖を補助してくれて、声帯筋に過度に力を入れなくても強い閉鎖が出来れば成功なのですが、この連動が機能しないとお腹に力を入れることが体の他の部分にも硬直として伝わり、声帯周辺にも柔軟性がなくなると、より不自由な声になることもあります。

結論

 のどで歌っていると言われたり、感じたりするときにのどを使わないようにすることではないということがまず第一です。さらに声帯の閉鎖に関して声帯近くの筋肉に頼りすぎているので、遠くの筋肉がそれを助けてくれるように練習をしていく必要があります。主に横隔膜ということになりますが、むやみに力を入れると硬直がのどに伝わり、かえって逆効果になります。少し横隔膜が収縮すると、その分声帯の閉鎖が起こりますので、この少しの変化をつかむことが出来れば解決に向かいます。

のど声

 似たような表現にのど声と言われるものがありますが、これは声帯の閉鎖が強くて声帯の伸展が十分ではないときに使われますので、少し違います。言葉の本来の意味を考えても何の役にも立ちませんので、どのようにこれらの言葉が使われているのかを考える必要があります。ですので、のどで歌うということ、もしくはのど声がどのような状態かよく分からない人に、のどで歌ってしまっているよ、とかのど声になっているよと言っても何の助けにもならないので、あまり使うべき言葉ではないのでしょうね。レッスンの中で私がこのような表現をすることは全くありません。