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喉を開けることが空間を広げることだと勘違いしたときの問題点~発声の情報を見分ける6

喉を開ける

 発声のレッスンではお腹を使うことと喉を開けることがとても頻繁に指摘されます。その中で喉を開けることに関して、喉を開けると空間が広がり、共鳴が起こり、倍音が増えて、良く響く声になる。といわれることがあります。これは間違っているのですが、そうだと信じても良い発声になることもあり、また逆に発声が上手くいかないこともあります。理論的に間違っていても良い結果が出るのであればそれで良いのではないかと思いますが、これが逆に発声を崩してしまうことがありますので、その時には考える必要があります。

喉を開ける~発声の情報を見分ける3

共鳴と倍音

 喉を開けるということは声帯を引き伸ばすことだというのはあちこちで書いていますので、確認していただければと思います。決して空間を広げるのでは無く、声帯の状態です。共鳴は音が壁に当たったときに反射して起こる現象です。壁が音を反射することが必要で、完全に吸音する素材で壁を作ったら、どんなに大きな空間があっても全く共鳴は起こりません。空間があることは必要ですが、大きくすることはそれほど重要ではありません。また倍音は2倍、3倍、4倍・・・の周波数の音程の音が聞こえる現象ですので、倍音がとても強く出てしまうと音程が分からなくなります。

空間を広げようとして上手くいくケース

 空間を広げようとして発声が良くなるケースと逆に悪くなるケースがあります。それぞれで何が起こっているのか考えていきます。まず良くなるケース。空間を広げようとしても外から見えるわけでもないので、確実に広げられるものではありません。そうなると基準になるのは、空間の広がりでは無く、空間が広がった音だとして先生が出しくださる声になります。つまりここで順序が逆になっているのです。空間が広がったので、よく響く声になるはずですが、よく響く声が出たので、空間が広がったのでは無いかと考えるわけです。もちろんこれは勘違いなのですが、一番上手なレッスンの受け方になります。よく響く声を獲得した生徒はこれが空間を広げられた状態なのだと勘違いをすることになりますが、それでもこれを容易に再現することが出来て、そのうちに空間を広げようと考えなくてもきれいに伸ばされた声帯で歌えれば、何の問題も無いので、声楽の長い歴史はこの間違った理論のまま進んできましたし、とても素晴らしい名歌手がたくさん生まれてきました。

空間を広げようとして上手くいかないケース

 さてでは上手くいかないケースを考えてみます。ここでは先ほどの勘違いが起こりません。声がよく響けば良いのでは無く、なんとかして空間を広げようと頑張ったとします。先生の言葉をそのまま信じて何とかしようとします。ここで問題が起こります。空間をできるだけ広げようとすると、声帯は閉じにくくなります。空間を広げたいと一生懸命に頑張っているときに声帯だけしっかり閉じようとするのは感覚的に迷ってしまいます。声帯をしっかり閉じて、声帯より遠いどこかが広がるのは出来そうな気をしますが、声帯に近いどこだか分からない部分を広げながら声帯を閉じるということはほとんど不可能になります。それでも空間を広げる事が課題だとすると、声帯の閉鎖が悪い声になってしまいます。当然響きの悪いざらついた声になるのですが、さらにもっと空間を広げなければならないと思ったら、声のざらつきはもっとひどくなるし、効率の悪い声になりますので、無理して力を入れないとちゃんとした声になりません。どんどん変な発声になってしまいます。

まとめ

 この二つの違いは空間を広げることに固執せずに響きが良くなることに注目したのか、本当に空間を広げることにこだわったかの違いになります。真面目に先生の言葉通りに練習した結果間違ってしまう例です。音楽のレッスンではこの例に限らず文字通り言葉を考えると大きく間違ってしまうことが多々ありますので、変だと思ったら、言葉通りには捉えないことがとても大切になります。さらに本当に正しいのは何かをしっかり考えていくことも大切です。