フースラーをネットで検索してみると、
アンザッツ(日本ではあたりと言われることが多い)
について書かれているものが多いようですが、
日本語訳されたフースラーの本「うたうこと」では
このアンザッツについて書かれているのはおよそ180ページの中の10ページほどです。
そのほかにも多少は出てきますが、
それほど全体の核になるようなものではありません。
またアンザッツを攻略すると素晴らしい声になるように書かれているものもあるようですが、
フースラーの本ではアンザッツに関してそのような記述は見当たらず、
それよりもすべてのアンザッツには長所と短所があるので、
偏った練習にならないようにバランスをとることの重要性が書かれています。
本の中では発声器官の解剖学的な説明がたくさんの部分を占めます。
ただ、通常の解剖学の本は器官の図解と名称、
またその働きなどを書いてありますが、この本ではそれだけではなく、
どのような声を出すと発声器官はどのように動くといった、
声の状態と発声器官の変化をとても詳しく解説されています。
その後声区、アンザッツ、声種などが書かれ、
そのほかは様々な声の問題と発声器官の関係、
発声練習に臨むための考え方などでできています。
基本的には様々な声の状態を発声器官の状態変化で説明した本になります。

一つのアンザッツのみを長期間練習し続けると必ずバランスを壊します。
ラッキーなことにそうならなかったとしたら、
本当に一つのアンザッツにこだわっては練習しなかったということです。
そういう意味ではある種のルーズさは逆に良い結果をもたらすこともあります。
難しいところです。

にもかかわらず、アンザッツがフースラーの本質のように書かれていたり、
さらにはアンザッツにこだわりすぎるところが欠点であると書かれていたり、
このように情報はゆがめられていくものだなあと感じてしまいます。
全体の数パーセントの部分を取り上げて、
これが何よりも大切だとか、
逆にこれにこだわるべきではないとか言われても
フースラーも困ってしまうでしょうね。
しかし数パーセントであってもそれなりのページ数を割かれているともいえますが、
フースラーが初めて提唱したわけではなく、
発声指導の現場でとても多く活用されている
「あたり」の位置を6つもしくは7つに整理し、
それぞれの場合の声帯の変化と長所短所をまとめたに過ぎません。
作業としては新しいものの提案ではなく、
今までのものを整理しただけです。
発声法ではないのです。
フースラーのアンザッツ(あたり)の発声での実践~アンザッツの利用方法

しかし、発声でのバランスの崩れを的確なアンザッツの練習をすることによって
修正していくのにはとても有効です。
多分に指導者の耳とテクニックによりますので、
指導者は正しくそれぞれのアンザッツを知り、またその危険性も知り、
レッスンを進めていく必要があります。
また受講生は効果があっても一つのアンザッツに固執して
長々とそれだけ練習することのないようにしていくことが大切です。

アンザッツに固執することが悪い状況を作り出すこともあります。

前回フースラー先生の弟子であるリンデンバウム先生に私の習った森先生は
指導を受けていることを書きましたが、
同じリンデンバウム先生からほぼ同じ時期に指導を受けて、
その後日本でレッスンをされていた先生の話を聞いたことがあります。
同じリンデンバウム先生のお弟子さんなのですが、
全く違う指導法だったようです。
森先生は呼吸の練習が何よりも先でしたし、
さらにどの練習メニューも呼吸とむずびついたものでした。
しかし、もう一人の先生は呼吸の練習はほとんど無かったそうです。
喉の周辺の練習ばかりで、
それも呼吸と結びつけての練習ではなかったそうです。
そして呼吸に関しては正しい喉の使い方ができれば、
呼吸も良くなるとのお考えだったようです。

良い悪いの話しではなく、
同じ先生に指導を受けても正反対のレッスンになることもあります。
現代は最新の情報を簡単に入手できる環境がずいぶんと整ってきました。
しかしその中には間違っているものもあり、ある部分だけ強調したものもあり、
変に切り取られたものもあり、
場合によっては悪意を持ってある方向に誘導しようとしているものもあるかもしれません。
自分でしっかり感じ、調べ、考えることが大切なのでしょうね。
レッスンでは具体的にアンザッツの変えながら音の変化を感じられると思います。
興味のある方は体験してみてください。
- アンザッツは新しい考え方なのでしょうか?
- そんなことはありません。
フースラーは今まで利用されていたアンザッツを分類し、
さらにそれぞれ場合の喉と体の状態と結びつけただけです。
アンザッツを利用しない発声の先生はいないと思います。
久米音楽工房では、
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