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Waldesgespräch(森のささやき)~シューマン 4

Waldesgespräch

Es ist schon spät,es ist schon kalt,
Was reitst du einsam durch den Wald?
Der Wald ist lang,du bist allein,
Du schöne Braut! Ich führ dich heim!

“Groß ist der Männer Trug und List,
Vor Schmerz mein Herz gebrochen ist,
Wohl irrt das Waldhorn her und hin,
O flieh! Du weißt nicht,wer ich bin.”

So reich geschmückt ist Roß und Weib,
So wunderschön der junge Leib,
Jetzt kenn ich dich – Gott steh mir bei!
Du bist die Hexe Lorelei. –

“Du kennst mich wohl – von hohem Stein
Schaut still mein Schloß tief in den Rhein.
Es ist schon spät,es ist schon kalt,
Kommst nimmermehr aus diesem Wald.”




森の対話


「すでに夜も更け、寒くなりました
なぜあなたは一人寂しく森の中を馬で走っているのですか。
森は深くあなたは一人、
美しい人よ、私があなたを家へ連れて行ってあげましょう。」


「男達の企みと策略は底知れない、
苦しみで私の心は張り裂けそうです。
角笛があちこちと彷徨っています、
さあ、お逃げなさい。あなたは私が誰だか分からないのです。」


「馬も女性も美しく飾られていて、
若いその人は驚くほど美しい。
今やっと分かった。神様お助け下さい。
あなたはローレライですね。」


「あなたはよく私を知っているはずです。高い岩のところから
私の城は静かにラインの深みを見ています、
すでに夜も更け、寒くなりました。
あなたはもうこの森から決して出ることは出来ません。」

ローレライ伝説

 森に入り込んだ騎士とローレライの会話でこの曲は進んでいきます。しかし、この寓話をローレライの伝説を描いただけのもととらえずに、男性と女性の駆け引きの劇をローレライを通して描いていると考えた方が良いでしょう。言葉巧みに美しい女性を自分の方に引き寄せようとする騎士が、結局彼女から逃れられなくなってしまうわけですが、これから何を感じるのかは寓話の持つ曖昧さもあり、様々です。

ローレライ伝説

ライン川が大きくカーブするところの崖に「LORELEY」と書かれた看板があります。せっかくのきれいな景色が少し残念ですが、ここに伝わる伝説です。

この付近を船で通っているとローレライの歌声が聞こえてきます。この歌に聴き惚れているうちに舵取り失敗し座礁してしまい、多くの船が水没してしまうといった伝説です。川が大きくカーブするところで、難所だったのかもしれません。

馬に乗った騎士の登場と美しい女性の出現

 では曲を見ていきましょう。まずは騎士の登場です。前のIntermezzo(イ長調)の属調ホ長調でこの曲は始まりま す。属調に転調することで、少し前向きに音楽が進んでいく感じと、ホ長調という明るい幸せな色のある調性のため、最初の部分ではローレライの予感は全くあ りません。和声もトニック、ドミナントが交互に繰り返されとても安定した中で、堂々としたリズムとともに騎士が現れます。
 9小節目から音楽は動 き始めます。ピアノのパートを見ると分かるようにここから音楽はクレッシェンドを始めschöne Braut(美しい花嫁)の言葉でピークを迎えます。しかしこの部分で音楽は細かい転調を繰り返します。(dis moll, cis moll, H durと2度ずつ下降していきます)11,12,13小説目の最初の音を見ると、同じようにDis,Cis,Hとフレーズの山の音が2度ずつ下降していき ます。クレッシェンドしながら下降していく形が今の状況の不自然さを暗示していきますが、すぐに最初の登場の調性ホ長調に戻り(14小節目)騎士の堂々と した威厳のある声で、彼女を家に誘います。Ich führ dich heimの途中で一瞬音が途切れます。この休止がないとメロディーはとても自然に解決するのですが、この休止のためにぎこちない終わりになります。演奏する時にはここで少し時間がかかってもこの一瞬の休止を感じることは大切です。

ローレライのせりふ

 一瞬の休止の後やはり音楽は不自然な進行をします。突然のハ長調への転調です。ここから女性がしゃべるシーンになります。 騎士からすれば彼女は森で迷ってしまい、彼に助けを求めるはずなのですが、あっけらかんとしたハ長調に転調します。音型も上行形の分散和音で、微塵も不安 や心細さなどは感じられません。和声進行もトニック、サブドミナント、ドミナント、トニックのごく普通のカデンツが繰り返されるだけです。
 音楽 は25小節目から動いていきます。ここでも2度ずつ下降する転調(H dur, A dur)が続きます。さらにこのシーンでは半音階の動きも大切です。まずは歌のパート25小節目の最初のE、次の小節の頭Dis、次のD、次のCis、次 の小節でC、Hと長く半音階の下降をしていきます。また、ピアノのベースラインも同様に、25小節目より、C、H、B、Aと半音階の下降です。半音階が続 くととても不安な感じが増します。その最後にO flieh’!(さあ、お逃げなさい)と言われるわけです。騎士からしてみれば、道に迷って心細くなっている美しい女性は、自分を頼って付いてきてくれる はずでしたが、全く逆で、危ないから私から逃げなさいと忠告を受けることになります。
 31小節目から騎士の調性であるホ長調に戻っていきます。

ローレライだと気付く

 33小節目からまた騎士の台詞です。まだ今の状況が分からず、最初の登場の時と同じホ長調のトニック、ドミナントの繰り返 しで美しい女性のことを考えます。41小節目でやっと彼女がローレライだと分かります。ホ短調に解決した後(41小節目)その平行調のト長調となり、歌と 言うよりも台詞に近い形で語られます。Gott steh’ mir bei(神様お助け下さい 直訳「神よ、私のそばにいてください」)はピアノでもう一度繰り返され、強調されます。その後のあなたはローレライだったのですね。というシーンはもうあきらめたかの ように、言葉を和音で支えるだけの伴奏になっています。

久米音楽工房
久米音楽工房

この曲では寓話が使われています。余談になりますが、日常でも例え話を持ち込んで人を説得するという手法はとても多く使われます。分かりにくいものをわかりやすくというのであれば問題ないのですが、正しくないものを正しく見せるために例え話に持ち込む例もたくさんあります。例え話に論理性があれば、全く違う話なのに、元の話が正しいかのように見せることも出来るわけです。このように寓話は長所も短所もありますが、芸術の世界ではとても多く使われています。何が正しいかを考えるよりも、純粋に自分にはどのように感じられたかが大切な気がします。絶対的な一つの結論に誘導したいのであれば、寓話は使わない方が良いのですから。

結末

 45小節目からまたローレライがしゃべり出します。今度は遠かったハ長調ではなく、騎士の調性ホ長調になります。ここで ローレライは騎士の世界に降りてきてしまったため、彼はもうそこから逃れることは出来なくなります。前半は15小節目からのシーンと同じに穏やかに進んで いきます。55小節目から、また半音階の下行形が出てきます。歌のパートのGis、Fisis、Fis、Eis、E、ピアノのベースのE、Dis、D、 Cis。そして、59小節目で強い減7の和音を迎え、またホ長調の騎士の音楽に戻っていきます。二人はともに森の中に消えて行ってしまうことになるのです が、不幸にも騎士はローレライにつかまってしまったと考えるのか、永遠の伴侶を手に入れたと考えるのか、さてどうでしょうか。

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