この曲はおそらくイタリア歌曲で一番有名で、
高校の音楽の授業で歌ったことがあるという人も多いようです。
有名ではありますが、歌いやすいということではありませんので
特に音域の狭い人は別の曲から始めた方が良いかもしれません。
音域に問題がなければ、この曲から始める事もありかと思います。

普通メロディーは中間域から始まり徐々に上がり、
また同じくらいの高さまで下がるものが一番歌いやすいし、
一番自然に聞こえる、とにかくよく見かける形です。
しかしこの曲はほとんどのフレーズが最初の音が一番高く、
だんだんと落ちてくる形で書かれています。
普通ではないこの形がこの曲の最大の特徴ですので、
この形を出せるように、最初の音に一番表情があるように歌っていきます。
中声用の楽譜だと最初のミ♭の音、次はドの音のように、
最初を大切に歌っていきます。
次も似たような形ですが、「あなたがいないと心がやつれてしまう」という歌詞の
あなたに当たる「te」の言葉を強調できるように突然高くなるように作られています。
強調したい言葉が他にある場合は変形されますが、
それ以外は最初の音が一番強調されるように書かれています。

唯一この形が崩れるのが14小節目からの2つのフレーズです。
通常の形、中間音から始まってだんだんと高くなり、
また同じくらいのところまで戻っていきます。
形が変わりましたので、今までとは違う変化を感じる必要があります。
調性も変わってきます。属調転調といいますが、
フラットが一つ減る(この場合ラのフラットがナチュラルに変わります)方向の転調です。
音楽が発展していくときに使われる転調で、
この部分も同じように、はっきりとクレッシェンドしていきます。
しかし16小節目の3つめのフレーズでもうすでに今までと同じ、
最初にピークのある形に戻ってしまいます。
この3つめのフレーズ Cessa, crudel, tanto rigor の部分も変形されていますが、
基本の形はファ・ミ♭・レ・ド・シ♭です。中が少しうねっていますので、
そのままうねりを感じながら最初が一番強く、
徐々にうねりを感じながら落ち着いていくように歌います。

楽譜では特に最初のページは常に強弱記号はp(小さく)と書かれています。
レッスンでもよく勉強していらっしゃった人の中にとても小さな声で歌い始める方も多いですが、
音符は最初の音を強く歌うように書かれています。
これをどう考えるかは最後に書いておきます。
さらに5小節目の3拍目の前でブレスを取るか取らないかも迷うところかもしれません。
ブレスなしでの演奏することも可能ですが、ブレスを入れることによって、
最初のミ♭も次のドもしっかりと強調できる演奏になりますので、
無理して続ける必要は全くありません。
かえってブレスを入れる方が良い演奏になることも十分にあります。

最後にもう一つ。ではなぜこの曲はこれほどまでに最初の音を強調するように作られているのでしょうか。
この曲は恋人(いとしい人)に向けた強い思いを歌ったものです。この思いは曲の中で徐々に高まっていくのではなく、最初からとても強くあります。この強い思いが、
しつこいくらいに最初にピークをつけたメロディーで表現され続けます。
ではなぜフォルテで歌われないのでしょうか。
もしこの強い思いをフォルテでダイレクトに恋人にぶつけたら、
それば刃のように恋人を傷つけてしまうでしょう。
あくまでも優しくしかし強い思いで歌います。
pの表記はこの優しさのためであり、
決して思いが薄くなった歌を歌うものではないと思います。
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