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喉に力が入る~常識を疑う 15

「喉に力が入っている」を考える

 発声のよくない状態の一つで、「喉に力が入っている」といわれることがあります。「腹式呼吸ができていない」もそうですが、とても無責任な論理的ではない言葉なのであまり好きではありません。ただ何を指して喉に力が入っているといわれているのかを考えてみます。当然のことですが、きちんと喉に力を入れないと声は使えません。老化で声がかすれてしまうのは、喉に必要な力が入らなくなったのが原因です。喉に力が入りすぎるよりも、十分に力が入らないことの方が問題です。

 完全に喉の力を抜いての発声は考えられませんので、他のことを考えてみます。力を入れすぎているという事なのでしょうか?これだと少し分かるような気もしますが、ただ少し変な感じがします。家で普通にしゃべっているときに、力を入れすぎだと思うことがあるでしょうか?ただ、うるさいところでしゃべるときには力入れすぎたと感じることもあるでしょうし、長時間しゃべってしまうと、声が出しづらくなり、無理していたんだと思うこともあります。

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喉に力が入るのは筋力不足?

 では普段からうるさいところでしゃべり続けているとどうでしょうか?おそらく多少大声でしゃべっても問題ないでしょう。力を入れすぎだと思っていた現象は、力が足りないために起こっていた現象だと分かります。良い発声をしていても、筋力が足りないと声は無理をします。この筋力不足の状態でも、力の入れすぎと言われますので、文字通り受け取らないことも大切です。

発声器官が無理している例

 声帯や声帯の周りの筋肉に無理がかかる状態には、色々なことが考えられます。
1,まずは大きな声を出すためには強く声帯を閉じる必要があります。そうすると声帯も強く振動します。この時声帯が安定していないと、振動がバタバタと不規則になってしまいます。この振動が声帯を傷つけていきます。強い振動が悪いのではなく、安定しない声帯の状態が良くないのです。
2,高い音を出し続けていると逆に低い音が出しづらくなることがあります。声帯を引き延ばす運動はとても大切ですが、たまに緩めてあげないと、バランスが悪くなります。しかしこの状態を「喉に力が入っている」といわれることはありません。
3,声帯を動かすために声帯の周りの筋肉(外喉頭筋)も使うのですが、これが空回りをして、声帯に必要な力が正しく伝わらないと、必要以上に力を入れすぎることがあります。首や背中が凝ってきます。

対処方法

 「喉に力が入っている」と言われたとしても、症状は様々ですし、基本的には必要な筋肉が正しく動いてくれないために、声帯等の筋肉に無理がかかっている状態を指しています。正しく把握して、必要な力をしっかり入れられるようにしていけると良いですね。
 言葉に惑わされて、必要な力を抜いてしまわないようにして下さい。最後にもう一つ。余分に入ってしまった力は意識して抜かないと抜けないのではなく、必要な筋肉の動きが起これば、自然に抜けていきます。目の前のコップを持ち上げるときに力を入れすぎていると思うことも、意識して無駄な力を入れないように考えることもありません。筋力もしくは筋肉のコントロール不足が、他の部分に無理をさせているのが力が入りすぎている状態の正体です。

レッスンでも結構無理しながら歌われる方もいらっしゃいます。どちらかというととてもまじめに言われてきたことを守ろうと練習してきた方に多いです。今までの歴史が根強く邪魔をしますので、時間はかかりますが、丹念に一つずつ使わなければならない筋肉を使い続けると徐々に無理している部分がなくなっていきます。元々が真面目な方なので、その後素晴らしい歌を歌えるようになっていくことも多々あります。

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