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鼻腔共鳴について~発声のしくみ50

 発声において声帯の振動の状態は何よりも大切ですが、それが共鳴することにより完成されます。共鳴はとても大切なのですが、少し気になることがありますので、書いてみます。まずは共鳴について2つの勘違いが考えられます。

  • 共鳴腔を広げなければならない
  • 共鳴腔に息が流れなければならない。

 小さな虫でもとても大きな声で鳴くものですが、そのからだが2倍大きければ2倍の音量で鳴くことが出来るかというと、そんなものではありません。ヴァイオリンよりもコントラバスの方が大きな音が出るということもありません。共鳴が十分にあるために、共鳴腔をより広げようと考え易いところですが、そういうものではないということです。共鳴腔で一番取り上げられるのは鼻腔かと思います。しかし、鼻腔は頭蓋骨で囲まれた中にありますので、容易には広げられません。また顔の中で容積を一番簡単に変えられるのが口の中です。しかし、口の中を大きく開けても、声はもこもこするだけで、声量が増えたりしないことも容易に分かります。

 さらに、軟口蓋を持ち上げる(注1)のも共鳴腔を広げるために大切だと言われることもあるようですが、軟口蓋のすぐ上に骨があり、容易には高さは変わらないでしょうし、もし軟口蓋が本当に少し持ち上げられたとしたら、口の中の容積は広がるかもしれませんが、鼻腔の容積は狭くなることになります。どう考えても共鳴腔の容積は関係なさそうです。

 次の共鳴腔に息が流れる必要があるかということですが、これも疑わしいところです。共鳴腔に空気があることと穴が空いていることは必要なのだと思います。例えばヴァイオリンのボディは空洞になっています。弦が振動することにより周辺の空気が振動し、その振動がボディの中で共鳴して大きな音になって出てくるのですが、f字孔を通して振動は伝わりますが、空気自体が行き来しているわけではありません

 鼻腔共鳴のために鼻から息を少し出す必要があるのではないかといった質問を受けたことがありますが、そんなことはありません。その証拠に大抵の発声練習は鼻をつまんでも出来ます。そしてちゃんとその状態でも鼻腔共鳴は感じられます。もし脳が他の部分にあって、頭の中が空洞になっていたら共鳴していただろうと思います。ただし頭蓋骨に少し穴が空いている必要があるでしょう。しかし、胃のように筋肉だけで出来ているところでは共鳴は難しいのではないでしょうか。

 共鳴腔を広げても意味が無いし、そこに息を送る必要も無いとすれば、共鳴に対して私たちは何が出来るかということになりますが、おそらく何も出来ないでしょう。声帯がきれいに振動すればふさわしい共鳴は自然に起こるように出来ているのではないかと思います。共鳴は声帯が正しく振動しているかの確認は出来ても、積極的に作れるものでは無いと思います。

注1) 軟口蓋はおそらくほとんど動きませんが、軟口蓋を持ち上げるように感じることで、声帯は少し立ってきます。これにより声帯は伸展され、やや高い音が出しやすくなり、振動は雑音が減ったクリアな響きになります。これが鼻腔に響いて感じられるのです。ちなみに軟口蓋を引き上げようとしているのですが、本当は甲状軟骨がやや下向きに傾きます。この反応がなければ、軟口蓋を持ち上げようとしても効果はありません。

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