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Ave Maria~シューベルト 6

なぜか違う詩で歌われる

 シューベルトのアヴェ・マリアはウォルター・スコットの叙事詩「湖上の美人」の中の詩に作曲されたものです。とても変なことですが、この曲はしばしば教会で歌われるラテン語のアヴェ・マリアの歌詞に置き換えて演奏されています。翻訳されているのではなく、たまたまアヴェ・マリアから始まるだけです。スコットの詩とラテン語のアヴェ・マリアとは無関係にもかかわらず、全くの勘違いがそのまま続いているという事です。
 本来は反逆罪で捕まってしまった父の身を案じて、エレンがマリアに祈りを捧げる歌です。シューベルトはこの詩を読み、そこから浮かび上がったもので音楽を作ったのであり、ラテン語のアヴェ・マリアとは無関係なわけです。さらに曲のタイトルはエレンの歌第3番で、アヴェ・マリアですらありません。

間違いが続いてしまって常態化

 明らかな間違いですが、長く続いてしまうと、間違っている方が常識になってしまい、元々ラテン語の宗教曲だと思っている人も多いかもしれません。すべてを知ることなどできるわけないのですが、間違いが分かったら、正していく勇気も必要なのでしょうね。

男性の歌、女性の歌

 元々女性が歌う歌なので、そのまま女性が歌うことが多いのですが、最近は男性が歌うことも多くなっているようです。女性の歌だから女性が歌うべきだという方が、先ほどのラテン語の歌詞に変えてしまうべきではない、という考え方と一致して思えるかもしれませんが、女性の歌男性の歌をあまりしっかり分けてしまうと、詩人は男性が圧倒的に多いですので、女性の歌える歌は極端に少なくなってしまいます。イタリア歌曲集のアマリッリも女性の名前ですので、アマリッリに愛を歌うのは男性であるべきですので、女性は歌えなくなってしまいます。女性が歌っても不自然でないように例えばアマリッリの名前をアントニーノに変えてしまうのは、ありえないでしょうね。

 この曲は有名ですが、とても難しい曲です。とりわけ難しくしているのが、長いフレーズを一息で演奏しなくてはいけない部分が多いことだと思います。演奏についてはまた次回書きます。

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