音の高さを捉える感覚に絶対音感と相対音感があります。絶対音感はご存じの方が多いと思います。正確に把握することの難しい音の高さを何らかの方法で記憶でき、今鳴った音が何の音かがすぐ分かるし、指定した音をすぐに正確に出すことの出来る能力です。ピアノの鍵盤が頭の中にあるようなものです。それに対し相対音感は音の高さの記憶は無いが、基準の音をもらえばすぐに今聞こえている音が何か分かるし、また基準の音を元にして、どの高さの音もすぐに正確に出せる能力です。言葉のイメージから反対の能力のようにも思われますが、実は近い能力です。高度な相対音感の持ち主が、完全に一つの音を記憶できたとしたら、それはすでに絶対音感になります。
絶対音感にもレベルの差がいろいろとあって、1音ずつだと完全に分かるが、和音になるとよく分からなかったり、時間がかかったり、調性のあやふやな速いフレーズでもすぐに聴き取れたり、ピアノだと分かるが、ほかの楽器の音はよく分からなかったり、頭の中に鍵盤が出来ても、それを生かすトレーニングが必要なのです。
また、これらの音感と、音楽を把握する能力や、生きた音楽を作る能力は別です。楽譜ソフトで移調楽譜を作ることがあるのですが、入力した音に間違いが無いかどうか再生して確認をします。ピアノとかオルガンの音色をまねた電子音で再生されるのですが、正確な音程、正確なリズムで再生されているにもかかわらず、期待した音楽とは別の曲であるかのような、面白くない演奏といったレベルではなく、本当に何の音楽だか分からないような曲になってしまいます。
ですので、絶対音感は便利な道具ではありますが、それ以上に生きた能力になるようなトレーニングがなければ価値が発揮されませんし、絶対音感はなくても音楽が分かるようになっていくと、もうそれは優れた音楽家なのだと思います。
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