発声練習は必要かどうか、といわれれば間違いなく絶対に必要ですと答えますが、ウォームアップの発声についてはなんとも言えないところがあります。通常の発声練習は出来れば2つのことを考えたいところです。一つは近い目標、もう一つは遠い目標を考えた練習です。近い目標は、出来ることを定着させる練習で、遠い目標はまだ出来ないことを少しずつクリアしていく練習になります。例えば高い音に向かって少しずつポジションをスライドさせていくことがやろうとすれば出来るのに、2度くらいの変化ではそのまま歌ってしまうようであれば、半音でも音程が変わればポジションが変化する練習を体に覚え込ませることが必要になります。繰り返していくことにより徐々に習慣になり、考えなく出来るようになります。このようなことは近い目標になります。それに対して、高い音が苦しくなってしまう、もしくは出せないときに楽に出せるような練習をしていくことは、集中していればすぐに出来るといったものではありませんので、遠い目標になります。
今回はこれらの発声練習ではなく、ウォームアップの発声について考えてみます。プロの歌手ではウォームアップする人としない人両方があります。どのくらいの比率かは分かりませんが、する人でも必ず30分くらいかけていつも同じ練習から入る人や、5分ほどの軽い発声をする人がいたり、しないといっても調子が悪いと思うときには何らかの発声練習をしますので、なんとも言えないところです。発声練習では当然ですが発声能力の向上が目的になります。基本的には使い慣れていない筋肉を使うことにより、バランスの修正をしつつ、足りない筋力をつけていきます。ですので無理をすることも時には必要ですし、発声練習直後に歌いやすくなるわけでもないことが多々あります。それに対してウォームアップは直後に歌いやすくなることが目標です。
私自身はウォームアップメニューを作ったことはありますが、あまりうまくいきませんでした。あまりにも日々体や喉の状態が違うので、同じメニューで毎日練習することが効果的ではなかったわけです。しかし、逆に同じメニューをやることで安心して歌の練習に入っていける人もあると思いますので、本当に個人差があり、こうでなければといった結論にはならないように思います。
自分に合ったウォームアップメニューを作らなければならないと思うことはありません。 ウォームアップ無しにすぐに歌えるようであれば一番楽です。逆にウォームアップに頼っているとそれが出来ないときに歌えないので、準備無しにさっと歌える練習が必要だと思うかもしれません。例えばレッスンに行くときに家でウォームアップ出来なかったとしたら、先生のところで少しだけウォームアップの発声させて下さい。とお願いするのもありだと思います。私だったら100%「どうぞ、やってください」と答えますが、先生によっては違うこともあります。そして、最初の練習と次の練習は逆の順番の方が良いかもしれないなどのいくらかのアドヴァイスをするかもしれません。そしてそれも出来ない状況だとしたら、いつものルーティーンを頭の中で想像します。それだけで喉の筋肉は反応していきますので、ウォームアップしたような効果があります。日常で繰り返し練習しているからこその効果です。
結論。ウォームアップは有効だと感じたらやると良いし、そうでないと感じたら無くても良いと思います。
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