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息の流出について~呼吸法25

息を吐くこと

 当然のことですが、息が流れていなければ、声は生まれません。しかし、呼吸に関しては、腹式呼吸という言葉に代表されるように、息の吸い方に関して語られることが多く、息を吐くことについてはあまり語られないようにも思います。間違った意見ですが、お腹を膨らますように息を吸って、吐くときにはお腹をだんだんとしぼませながら吐いていくといったものもあります。こうなるとどうも不安定になってしまうので、今度はお腹を膨らませて息を吸い、それをキープしながら息を吐くといった意見も出てきます。しかし変なところもあります。お腹を膨らませたままで息を吐くということは、息を吐くエネルギーはどこにあるのかということです。結局息を吐くことに関しては何も触れていないのです。

横隔膜の自覚~レッスンで 24

息を吐くときの6つのこと

 良い発声のための息を吐くことについて真理だと思えることをいくつか書いてみます。

  1. 一定の強さで吐き続けることが出来る。
  2. その息ができるだけ長く続く必要がある。
  3. 吐きすぎると声帯の振動が汚くなる。
  4. 息を吐こうという意識が極力ない方が良い。
  5. 息のスピードに音楽のテンポが感じられる必要がある。
  6. 緊張感のある(圧力の高い)息の流出が必要。

 本当に発声が分かる人でこれらに異議を唱える人はいないと思います。絶対に正しいと思うのですが、ではどのようにするとこのような息が作れるのかを考えないといけません。6つの項目のうち、1,2,6番は横隔膜の関与がとても大切です。息をたくさん吸うと肺が膨らみ、それがある種の緊張状態を作ります。そのため通常の呼吸ではそれをすぐに吐いてしまいたくなります。しかしこれでは2~3秒で息はなくなり、とても歌えるものではありません。今度はやはり同じようにいっぱい息を吸って、それを15秒くらい続けられるようにゆっくり吐いてみます。少し頑張って少しずつの息にしないと続きませんし、この呼吸で一日暮らさなければならないとしたら、大変なことになってしまいます。

 残りの3番に関しても横隔膜がしっかり働いていれば息を吐きすぎることはありませんので、横隔膜が重要になります。横隔膜に関しては今までたくさん書いてきましたので、それを読んでみてください。すべて息をセーブする(出し過ぎないようにする)本来の横隔膜の役割が必要になります。4番5番の息を吐こうとしない、また息にテンポが感じられるようにというところから息を吐くことを考えていきます。

息は吐こうとせずあふれ出るように感じる

 息は自然にあふれてくるように感じられる方が良く、吐こうとする感覚が混ざってしまうと、どうしても無理に音を生み出す感覚がなくなりません。無音の状態から自然に音は始まり、また無音の状態に戻れるような音を作りたいと思います。そのためにお腹から吐くのではなく、もっと下から、足やお尻から息が流れていくように感じられると、上半身は息の流出に関して積極的に力を入れずにすみますので、吐いている感覚なしに息が流れていきます。実際には臀筋(お尻の筋肉)や腹斜筋が重要になりますが、とにかく上半身にあまり力が入らないですむくらいに下の方から息が始まるように吐いていくことが必要になります。

 このホームページをしっかり呼んでくださっている方には、声帯付近の筋肉はとても細かく書いているのに、なんともざっくりとした書き方に感じられる方も多いかと思います。お腹よりもっと下から吐いていくと書いているだけですので、なんだか不安に感じる方も多いかもしれません。さらに息は肺にしか入りませんので、お腹より下にあるはずもなく、このことも曖昧な理由になります。しかし残念ながらこの一連の運動について、詳しく筋肉の動きと音に関して研究されたものをまだ見たことがありません。横隔膜に関しても、それ自体だけではなく、その周辺の筋肉が色々と関与しながら、横隔膜を動かし、その結果表情豊かな音を生み出しているのですが、細かく書かれたものを見たことはありません。しかし、 横隔膜の前、後ろ、中央、周辺部などの感覚ですべて捉えられます。そして今回の、より深いところからの息の始まりは、息を吸ったときに横隔膜は下がっていきます。その結果内臓が押されて、お腹が膨らむことは容易に自覚できると思います。しかし、さらに深く吸っていくとお尻や足にも何かしらの変化が感じられます。息の流出に関してはその逆をたどっていこうとするものです。誰かがその時の細かな筋肉の動きを捉えてくれるようでしたら、とても貴重な研究になるでしょうし、そうでなくとも練習に困ることのないはっきりとした感覚はつかめるように思います。

5番で息のスピードと音楽のテンポのことを書きましたが、補足します。こうなると速い曲の場合はたくさん息を吐く必要があるように感じられてしまいます。しかし、そうではありません。スピードを感じる息の流れであって、実際の息の量ではありません。その感覚は少し難しいかもしれません。

 正しい息の流出が行われれば、横隔膜は自然に働き出し声帯の伸展も自然に引き起こされます。その結果吐いている感覚無く音をスタートできるし、自然に消えていく音も作れます。またこの流出と横隔膜の緊張関係の中で、音のスピード感が生まれ、生きたテンポが生まれてきます。とても重要な練習です。

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