歌曲には有節歌曲と通作歌曲があります。1番、2番、3番があるのが有節歌曲、それがないのが通作という事になります。歌らしい形として接することの多いのは有節歌曲です。学校の音楽の教科書に出ていたものはほとんど有節歌曲です。1番のメロディーさえ覚えればあとは歌詞だけを変えていくと全曲歌えますので、簡単に歌えるようになります。
覚えやすいという利点はありますが、1番、2番、3番と歌詞はどんどん変化していきます。歌詞に寄り添って音楽が作られているとしたら、1番に合わせて作曲されたものは2番3番には合わなくなることもあります。有節歌曲の欠点はここにあります。そのために1800年代の最初までは歌曲と言えば有節で作られることが多かったのですが、その後は芸術家曲の分野ではほとんどが通作歌曲になっていきます。
有節歌曲を演奏する場合音楽と詩のずれが問題になります。例えば音楽の切れ目と詩の切れ目がずれている場合に、ブレスはどちらにするか。とか、苦しい言葉が使われているのに、明るい穏やかな和音が使われている場合にどうするか。とか、1番の歌詞に動きが感じられ音楽もそのように作られているのに、2番は時間が止まったような雰囲気の場合にどうするか等、色々な問題が出てきます。有節歌曲はだんだん無くなっていき、通作歌曲に移行していったのも納得いくところです。
Du bist wie eine Blume (君は花のように)~シューマン 8
音楽と詩のずれに関して、基本的には詩に寄り添って演奏していきます。場合によっては音楽的に歪な演奏に仕上がっていくこともありますが、変奏曲のように音楽の新しい面を引き出してくれることもあります。有節歌曲の例に限らず、詩と音楽は寄り添うこともあり、対立することもあります。しかし、このことを無視したり、中途半端な妥協したりせず、新しい発見につなげられればといつも思っています。
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