オペラで有名なモンテヴェルディの作品です。この曲もアリアンナというオペラの中のアリアですが、全曲の楽譜は残っていません。1ページの短い作品ですが、とても効果的な劇性があり、さすがモンテヴェルディと思える曲です。
3部形式で、6小節の最初の部分、14小節目までが中間部、その後やや変化されますが、最初の部分が繰り返されて、19小節で終わりです。短い曲はオペラの中では重要なシーンではないとも考えられますが、非常に緊張の高い、密度の濃い音楽も短くなることがあります。この曲は後者になるでしょう。
3部形式の最初の部分と最後の部分は、極力同じような雰囲気で始まった方が良いでしょうが、真ん中の部分は音が強くなるし、細かいリズムも増えてきます。少し速く演奏された方が良いでしょう。
では最初から見てみましょう。最初の部分はLasciatemi morireの2つの単語しか出てきません。アクセントはLasciatemiの2番目の音節、morireの2番目の音節の2カ所で、詩にピッタリ寄り添った作曲のされ方で始まります。morire(死ぬ)の方がより大切な言葉でしょうが、低い音にすることによって、より内的な表現につながります。さらにmorireはこの曲の中で、4回繰り返されますが、どれも中声用の楽譜でソの音になっています。絶対音がなくても、淡々と繰り返されるmorireにのせた思いが伝わってきます。2回目のlasciatemiは言葉のアクセントと音楽のピークにずれが出ています。上行する音の緊張感が大切ですので、ここで言葉のアクセントをあえて意識する必要はありません。
中間部はひたすらクレッシェンドされて、劇を激しく動かしていきます。それぞれのフレーズの山の音が、ラ♭、シ♭、レ、ミ♭と上がっていきます。さらに中間部の4つのフレーズの始まりが、最初は2分音符、次は4分音符、その後8分音符に変わり、最後は8分休符の後突っ込んで始まります。あらゆる要素がだんだん激しくなる劇を作り上げています。
最後に、繰り返された最後の部分はほぼ最初と同じですが、違いを見ておきます。2拍目から始まることと4拍目から始まることは、重要ではないように思えます。それ以外は初めのmorireの音の長さが短くなっています。ゆっくり味わうことなく次に進んでしまいますので、最初より緊張が高くなります。次は最後のmiの長さが付点2分音符に引き延ばされ、この曲の最高音がここでもう一度強調されます。次のmoは8分音符に変わり、緊張が残ったまま最後の言葉を発音することになります。
ルネッサンスからバロックにかけてのとても古い作品ですが、ドラマを音楽の中でどのように表現していくかの手本のような部分があちこちに見られます。芸術は他の芸術との融合を拒否するようなところがあり、劇と音楽がこのようにしっかりと結びついているのは驚くべき事だと思います。このような成功例から、今度の長いオペラの歴史が始まっていったのかもしれません。
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