頬骨のあたりを持ち上げて歌うようにと指摘されることも良くあります。ほほえんだような顔になりますが、深刻な曲を歌うときにも顔はほほえんで歌うのだろうか、といった疑問が出てきたりもします。それでも発声に絶対的に必要であればそうするしかないのですが、少し考えてみましょう。
フースラーのアンザッツ(あたり)の発声での実践~発声のしくみ59
頬骨を持ち上げるように発声すると、声は上あご前に明るく響きます。そのとき声帯の後ろはしっかり閉鎖され薄くなります。結果息漏れの無い、効率の良い音が作られます。しかし、このポジションのみ練習していくと声帯の伸展が少なくなりやすくなり、音量も音域も狭い幅になってしまう恐れがあります。喉を開く練習を同時に行うことは不可欠です。
このような練習はほとんどが良い面と悪い面がありますので、常にバランスを考える必要がありますが、声門の閉鎖がしっかり行われるのは魅力的です。私はレッスンで頬骨のあたりを持ち上げてと要求することはほぼありません。(発声練習の時にごく短時間使うことはあります。)
顔は笑って声は泣いてのような芸当は出来ないので、必要があれば曲の中ではなく、発声の時に短時間利用するのが良いように思います。
また、声門閉鎖はほほえまなくても他の方法が色々考えられます。声帯を伸ばしたり戻したりの運動がスムーズにいかないと、声門閉鎖はやややりにくくなりますので、声帯の伸び縮みの練習の後、息の音が極力無いようにしてみたり、支えを少し強くしたりする事も考えられます。もしくはダイレクトにうなじ付近にしっかり音をつかむように出してみるのもありです。
声門閉鎖がきれいに出来ればほほえむ必要は無いですので、それ以上にほほえんでいなければと考えるのはいかがなものでしょうか。
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