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腹式呼吸~発声の情報を見分ける2

腹式呼吸とは

 声楽といえばまずは腹式呼吸が出来なければというイメージをお持ちの方が多いように思います。今回はこれについて考えてみます。まず腹式呼吸とは何かということが分からなくてはなりません。これは簡単で、肺に息が入ってくると肺は膨らみます。その時に胸が膨らむと胸式呼吸、お腹が膨らむと腹式呼吸と名付けています。また、医学用語のようにも見えますが、呼吸のトラブルのある患者さんに対して胸式呼吸になってしまいましたとか、腹式呼吸になっているので大丈夫とか言われることは無いように、医学用語ではありません

 ここで二つのことを考えたいと思います。歌うということは息の吐き方がより重要なはずなのに、吸い方にのみ名前があること。そして肺はお腹だけ膨らむとか、胸だけ膨らむということはないので、呼吸は腹式呼吸と胸式呼吸が共に行われ、どちらかを全く使わないということはあり得ないということ。

お腹が膨らむように息を吸うことが正しい呼吸法だという考え方をなくそう~呼吸法24

正しい腹式呼吸を考えてみる

 こうなると私は腹式呼吸という用語には固執すべきではないと思ってしまうのですが、ただたくさんのところで歌を歌うには腹式呼吸は大事なものだと言われると、どうしても気になってしまうものです。そうなると正しいはずの(?)腹式呼吸をマスターするために、どのような腹式呼吸にすべきかを考えることになります。お腹が膨れるように息を吸うのがこの用語の意味なので、それは外せません。しかし、肝心の息の吐き方はこの用語は教えてくれていません。そこで想像するしかないのですが、お腹が膨れるように吸うのであれば吐くときはお腹がしぼむように吐くと良いかもしれない、そうすると次にまたお腹が膨らむように吸うことが出来、呼吸として完成します。お腹に風船があって、それが膨らんだりしぼんだりしながら歌うということです。理論としては成立しますが、実際に歌ってみると息の多い時と少ない時とで声が変わってしまうし、息っぽい音になってしまうし、あまり良いことがなさそうです。そうすると次には息を吸ってお腹を膨らますのは一緒で、息を吐くときにお腹がしぼまないようにすると良いかもしれないという考えが出てきます。しかしこれは不自然でとてもやりづらい。息が入ってくるからお腹が膨らむのであり、息を吐いてもお腹がしぼまなければ、次はお腹が膨らむように息を吸うことが出来なくなります。膨らんでしまったお腹がまた膨らむように息を吸うことは出来ないので、腹式呼吸の意味がなくなってしまいます。

歌にとって必要な呼吸

 このようなことで、発声が分からなくなってしまった経験のある方はとても多いのではないかと思います。それでも腹式呼吸は大切だと聞くことが多いと、正しい腹式呼吸とは何なのだろうと考えてしまうと思いますが、息を吸ったときにお腹が膨らむというだけの用語にそれ以上の意味を求めても無駄です。どんなに偉い先生から言われたとしても、少なくとも自分にとって意味があるものに見えない間は考えても仕方がありません。「歌うことにとって呼吸は重要な意味を持ちますが、それは腹式呼吸で表されるものではない」というのが真理だと思います。では歌にとって最も大切な呼吸とはということになりますが、これは簡単です。長く一定に吐き続けられる呼吸です。そしてこれは腹式呼吸という言葉からは全く想像できないものです。そしてこの時にお腹の筋肉はしっかりと使われますが、息を吸ったら膨らむお腹とは結びつくものではありません。

結論

 発声の色々な情報を考えるための記事を色々と書いてみようと思います。発声のみならず、常識に惑わされずに自分で考えることの大切さを書いていきます。私たちは残念ながら、学校で何が正しいかをたくさん学んできましたが、自分で考えることはあまり教えてもらえませんでした。正しいのは何かということよりも、自分で考える方がもっと大切なのではないかと思います。それは間違っているかもしれないという不安を常に孕んではいますが、自分で考えてたどり着いた結論なので、新しい情報が入ってきたり、考え違いをしていたことに気付いたら、すぐに修正をすることが可能になります。正しいのはこれだと習ったものは、その理由が分からないので、修正が効かなくなります。このような思い込みは正義を振りかざして容易に人を傷つける原因にもなります。現代に生きる私たちにとても大切な力なのではないでしょうか。

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