小学校の音楽の時間に、ハ長調でド・ミ・ソの和音、ファ・ラ・ドの和音、ソ・シ・レの和音をランダムに聴いて、どの和音だったかを当てる授業があったのを覚えています。そのときはなぜこの3種類の和音だったかなどは全然分かりませんでした。
これらの和音は主要3和音と呼ばれ、それぞれ順番にトニック、サブドミナント、ドミナントという名前が付けられています。もちろん他の和音もあるのですが、古典和声の場合、他の和音もこの3種類のどれかの性質を持ちます。
と言う風に習っていくわけですが、実際に曲を見ていくと、ベートーヴェン等の古典派の作曲家の作品を見ると、トニック (ド・ミ・ソ)とドミナント(ソ・シ・レ)が圧倒的にたくさん出てきます。その理由はドミナントによる緊張と,トニックによる弛緩の関係が音楽を作るのにとても有効だからです。
ドミナントによる緊張と言っても、複雑な和音を聞き慣れている私たちの耳にはピンと来ないところもありますが、ハ長調が耳 になじんでいる状態で、ソ・シ・レの和音を弾いてそのまま止めると、何とも中途半端な感じがします。そこで、次にド・ミ・ソの和音を弾くとホッとします。 このトニックに行きたいという感じが緊張で、この緊張と弛緩の繰り返しが巧みに組み合わされて音楽が構成されていきます。
久米音楽工房
ほとんどの芸術はこのように緊張と弛緩の揺れの中で起こります。
この緊張と弛緩の繰り返し、人は自分をそこに映していくのだと思います。赤く燃える夕日と、そのあとにくる夜の静寂に、今の自分の悩みや苦しみを映して感じたことのある人は決して少なくないでしょう。
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