声楽を始めるときまず最初にイタリアの古典歌曲からスタートすることがほとんどなのですが、よく使われる楽譜に全音楽譜出版社のものと教育芸術社のものがあります。今回はこれらの楽譜の紹介です。
全音楽譜出版社のイタリア歌曲集は1巻から4巻まであり、1,2巻は高声用と中声用、3,4巻は中声用のみ出版されています。以前は教芸版はありませんでしたので、歌の専攻生はほぼ全員全音版のイタリア歌曲集を持っていました。その後改訂版が出され、巻末に歌詞の対訳のみが書かれていたのですが、逐語訳(単語一つずつの訳)が足され、便利になりました。編曲は1853年生まれのパリゾッティ(作曲家、古典音楽研究者)です。
教育芸術社はイタリア古典声楽曲集というタイトルで、1巻、2巻があり、そのどちらにも高声用、中声用、低声用があります。こちらにも対訳、逐語訳が付いており便利です。さらに新しい楽譜ですので、通例少し変えて歌われる部分のある曲などはその楽譜も書かれていますので、より使いやすくなっています。編曲はこちらもパリゾッティです。
楽譜としては教芸版の方が新しい修正が入っていますので良いです。さらに1,2巻だけしか出ていませんが、高声用、中声用、低声用がそろっているのも便利です。その他には中声用の楽譜の調性が全音版と教芸版で違いがあります。基本的に全音の方が高い調性を選んであります。メゾソプラノまたはバリトンで落ち着く人は教芸が良いですが、ソプラノやテノールだろう人が高声用だとまだ無理をするときに全音の中声用の調性は便利です。
両方ともパリゾッティの編曲が使われています。ロマン派の作曲家で、古典音楽の研究者だったのですが、これらの曲集は多分にロマン派的な編曲がなされています。原曲がオーケストラの伴奏だったり、古い曲の場合は内声が書かれていないもの(歌とベースそして和音記号のみ)もありますので、編曲は必要になります。しかし、通常編曲する場合は原曲の様式に合わせるものなのですが、これらの曲はバロックや古典の時代の作品にロマン派の編曲がされるというとても特殊なものになっています。この中途半端さがこの曲集が歌の初心者用によく使われる要因の一つになります。バロックの作品をバロックの様式で歌うのは難しいところもありますが、ロマン派のようにもバロックのようにも歌って良いとなると自由度が増すので、歌いやすくなります。
残念ながら強弱記号、アクセント、またリズムなど矛盾のあるところが多々あります。演奏をするときに作曲家が書いた記号に従わなければならないと思うことは全くないのですが、それらがどのような意味を持つのかは考えたいところです。レッスンの中でもそのような時間は時々作るのですが、これらの楽譜の場合にはあまり考えて書かれていない記号も多いので、そのような勉強には使えません。初歩の音楽の勉強には必要な行程なのですが、少し残念です。
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