この「あくびの喉で歌う」という表現は、とても多く聞かれます。本当に文字通り、あくびの状態で歌うことは発声上よくありません。あくびをすると、口が大きく開かれます。その状態では歌っている人など見たことがありません。また、あくびしているまましゃべると、何をしゃべっているのか分からないような曖昧な発音になってしまいます。とりあえず本当にあくびをしているまま歌うことは間違っていますが、なぜこれが言われ続けているのでしょうか?
正しいか正しくないかでは無く、結果的に効果があればレッスンでは使われ、効果が無ければ使われなくなっていきます。本当は間違っているのに使われ続けているのは、とても興味深いことです。ではなぜ間違っているのに効果があるのかということですが、多分に先生の耳に頼っています。あくびの喉にするようにと指示を受け、生徒は自分で感じるあくびの喉をやってみます。それに対して先生はそうでは無い、少し良い、もっと良くなったというように誘導していきます。最終的にそれで良いとされたときには元々のあくびとは違うものになっているのですが、双方納得すると言うことになります。
結局先生の耳に頼って成り立っていますので、それが無い状態で、あくびの喉という言葉で発声練習するのはなかなか難しいでしょう。あくびの喉の本当の意味は別のところでも書いていますので、参考にしていただければと思いますが、簡単にまとめておきます。
あくびの喉にするようにと指示が出たときは、声帯を引き延ばしている力が十分ではないと言うことにつきます。スペースとか共鳴とかの話ではありません。声帯は喉仏のところにありますので、口の中は関係ありません。もっと奥です。声帯は前後にしか伸ばされません。前はやや下向き、後ろはやや上向きに力が必要です。音を立ててと言われるのもこのためです。通常よりやや薄い声帯になりますので、やや高い音が出しやすくなります。
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