頬骨を持ち上げて歌うようにという表現もレッスンでよく使われます。頬骨は骨ですから持ち上がりません。頬骨付近が引き上げられたような感じで歌うということになりますが、頬を持ち上げてやや微笑んだような感じのまま歌うということです。とてもよく使われますが、このことにより声はどうなり、その結果良いところ、悪いところは何かを書いてみます。

「頬骨を持ち上げる」ように歌うと、声帯に2つのことが起こります。一つは声帯の伸展。もう一つは声帯の後ろの閉鎖が強くなります。結果頬骨あたりに響きを感じるやや薄いはっきりした明るい音が出てきます。

2つの頬骨の上に親指と中指をのせてみます。そのまま手が上にあがるように微笑んでみると「頬骨を持ち上げた」状態になります。普通のまま声を出して、途中でこの「頬骨を持ち上げた」形に変えていくと、音程が上がりやすくなります。その時鎖骨の中央に向けてやや力が入ることに気づくと思います。この結果声帯がやや立ったような感じで引き延ばされます。さらに声帯の後ろにあり、声帯の開閉に大きく関与する披裂軟骨の回転が強化され声が上顎の前に明るく響きます。声帯の後ろの閉鎖が強くなった状態です。薄い明るい音になりますが、厚みのある声にはなりませんので、これだけに頼ってしまうと、表情の乏しい声になってしまいます。
頬骨付近が持ち上がるような微笑んだ状態で声を出すと、しくみはややこしいですが、軽く明るいはっきりした声が出ます。しっかりと前に響きの感じられる声を目指すとこのポジションの声になります。しかし、このポジションに頼りすぎると、薄っぺらい声になっていきます。
- 常に頬骨を持ち上げるように歌った方が良いのでしょうか>
- そうではありません。一時的に利用したとしてもすぐに切り替えた方が良いです。うまくこの練習が出来ると声帯が伸びた状態で閉鎖がしっかりしますが、そのうちに声帯が伸びづらくなっていきやすいです。結果幼い感じの薄っぺらい声になりやすいし、不安定な声の原因にもなることがあります。私はレッスンの中で頬骨を持ち上げてということは稀です。(短時間だけ利用することはあります)
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