発声において、喉を壊さないことはとても重要です。日常生活を送るだけでは喉を壊すことはめったにありません。たまに大声を出すことがあると、翌日声が出なかったり、ひどい喉風邪の時にも一時的に声が出なくなるときもあります。このように何らかの原因で声帯が腫れてしまうと自由に声が出せなくなってしまいます。しかし、これらはたいしたことはありません。腫れは必ず数日で引きますので、そうしたらいつものように声を使うことが出来ます。
多少頑張って練習しても簡単に喉を壊すことはありません。もちろん一時的に疲労したり、出しにくくなったりしますが、しばらく休むとすぐ回復します。あまり慎重になることはありません。
しかし、声楽家は多少声帯が腫れていても、歌わなければならないことがたくさんあります。そうすると声帯が回復する前に、また酷使され、声帯にペンだこのような突起物が出来てきます。これが結節とかポリープと呼ばれているもので、こうなると回復までは結構な時間がかかります。プロの声楽家はこういった危険性を常に孕みながら、それでも一つ一つのステージを全力で演奏し続けなければなりません。
このように声を壊していく声楽家は必ず一定数出てきます。そうすると様々な時代で、弱音発声を基礎に置く発声の派閥が生まれていたようです。ほとんど弱音で練習するので、声を壊すことはないのですが、残念ながら、そこからはプロの声楽家は生まれてこなくなります。そうしていつの間にかこの派閥は消滅をしていきます。大きな声を出すことなしに声楽の進歩はありません。音大の入試では広い音域を大きな声で無理なく歌えるかどうかが一番大きな課題になります。音程が良いとか音楽性があるとかはその次になります。しっかりした声があれば練習次第でプロの可能性がありますが、どんなに音程が良く音楽性があっても、しっかりとした声がなければプロの可能性はないと思われるからです。しっかりと声を出しながら、練習時間やメニューをコントロールして、声帯の健康を保つことが大切になっていきます。
気をつけながらも、しっかり声を出して練習することが必要なのだと書いてきましたが、実はその逆に弱音の発声も非常に重要です。次回はこのことについて書いていきます。
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