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姿勢について~常識を疑う 5

良いとされる姿勢

 レッスンや練習で歌うときの姿勢について、いろいろな指摘をされることがあります。背筋を伸ばして、あごを引いて、体をまっすぐに、両足に均等に体重をかける等々。間違ってはいないと思いますが、絶対的に必要だともいえません。オペラのように動きながら歌う場合、このような姿勢を保つことは不可能になるし、そうでなくても姿勢を気にするあまり本当に大切なものがどこかに行ってしまうこともあります。

発声のゆがみが姿勢のゆがみになることがあります。発声が良くなると姿勢も良くなっていきますので、発声の良し悪しの目安にもなります。

良い声を出している時の独特の形

 しかし、良い声が出ているときの独特の姿勢があります。まず肋骨の一番下あたりが全体的に広がります。これはおなかに息を吸って膨らませるといったものではありません。肋骨が広がる感じです。それとともにほんの少し胸が高くなります。これも肋骨の下部の膨らみから自然に上がってきます。この状態が歌い始めも終わりも保たれます。この広がった肋骨の上に自然に首が乗っかり、首の位置や角度は考えなくなります。

姿勢が良いから良い声になるというわけでもない

 肋骨の下部の広がりは横隔膜が広がって作られます。横隔膜はある程度の広がりを持っていないと発声に必要な運動が起こらないし、この働きにより、最初の声帯の伸展運動を手助けしてくれます。そのほかの姿勢はこの横隔膜の広がりから派生して作られます。横隔膜の運動がうまくいかないと、音を出して行くにつれて胸が落ちてしまいます。だからといって無理矢理胸を張っても、横隔膜がうまく運動してくれるわけではないので、意味がありません。またどうしてもこの肋骨と首の形は出来てしまうので、オペラであっても歌いながら首だけで振り向くことはとても難しくなります。体ごと振り向くことになります。(不可能ではありません)

 この状態は、良い発声が出来ているときに自然に出来る形で、姿勢を作ることによって声が良くなる可能性は低いでしょう。それだけではなく、姿勢にこだわりすぎると不自然に力が入って固い声になってしまいます。レッスンでは横隔膜が正しく使えていると胸は落ちないくらいの話はしても、胸が落ちないように頑張りましょうと言うことはありません。また、姿勢から横隔膜の状態を判断することもなく、横隔膜がきれいに行かないときに胸を見てみると落ちているなと思うことがあるくらいです。声を作るときにも、判断するときにも姿勢が優先されることはないです。

声帯の閉鎖に関して左右の差がある場合、姿勢を少しゆがめることによって補うこともあり得ます。この場合姿勢を無理矢理正しく修正しようとすると、逆にバランスを崩すことになります。

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