最近解剖学の本を手に入れたのですが、
私が習った、または思っていた「軟口蓋」の位置が事実とは違っていたことが分かりました。
多くのレッスンでは、
「上顎を歯の付け根から奥の方に舌で触っていったときに、
急に高くなるところが軟口蓋で、
そこを持ち上げるように」
と教わります。
私自身もそのように習ってきました。
しかし解剖学ではそこはまだ「硬口蓋」で、
もっと奥ののどちんこに近いところが「軟口蓋」ということらしいのです。
つまり軟口蓋だと思っていたところはまだ「硬口蓋の後の方」で、
もっと奥が「軟口蓋」だったのです。
★硬口蓋(こうこうがい=骨のある前側)
★軟口蓋(なんこうがい=奥の柔らかい側)

今までたくさんの先生や仲間と話してきましたが、
発声において「軟口蓋を上げる」のは常識でした。
おそらく先生も含めて全員が硬口蓋の後の方を軟口蓋だと認識していたのだと思います。
ただ最近軟口蓋は下げなければならないという説を時々聞くようになり、
鼻腔共鳴を増やすために空間確保をしようとしているのだろうと思っていたのですが、
正しい軟口蓋の位置(のどちんこ側)で考えると、
軟口蓋は持ち上げてはいけないことになります。
軟口蓋を本当に持ち上げると、
鼻への通り道が閉ざされますので、
少なくともMやNの発音は出来なくなります。
ただ本当に軟口蓋を持ち上げてMNの発音が出来なくなっている人の歌を聴いたことはないので、
軟口蓋を持ち上げてはいけないけれども、
下げようと努力する必要もないでしょう。
つまり本来の軟口蓋に関しては何もしなくてよいということです。
硬口蓋は骨があるところまでで、
骨がなくなったところからが軟口蓋。
こうなると、このサイトでは以前使ってきた「軟口蓋を上げる」という表現は、
本来の意味では間違っていることになります。
正しくは「硬口蓋のやや後ろの方を上げる(意識を持つ)」
というべきでした。
過去の記事をすべて書き直すのは大変な作業になりますし、
実際のレッスン現場では
今も「軟口蓋」という言葉が圧倒的に使われています。
そのため、サイト内の表現はあえてそのままにしておきますが、
用語としては厳密には違う、
ということをここで補足させていただきます。
硬口蓋の後の方を持ち上げようとしながら声を出すと、
(ただし実際には骨があるので持ち上がりません)
声帯が立ってきて引き伸ばされます。
その結果声帯の振動がシンプルになり、
雑音が減ります。
その結果必要な音程が増幅されて、
共鳴が効果的に使われる声になります。
そして軟口蓋(奥の柔らかいところ)に関しては下げると鼻腔空間を広げられるかもしれませんが、
軟口蓋の柔らかい筋肉の部分はほとんど共鳴はしないので、
あまり気にしなくて良い部分といえます。
軟口蓋の奥を本当に上げてしまうと鼻への通り道がなくなります。
さらに軟口蓋の前の方は硬口蓋の後と同じように
引き上げられると感じた方が、
声帯の伸展はさらに強くなるでしょう。
(フースラーの頭頂に向けてのアンザッツ=
一番柔らかい頭声)
用語の勘違いからの論争ではないかと思います。
軟口蓋を上げる派の人は硬口蓋の後の方を考えていて、
軟口蓋を下げる派の人は本来の軟口蓋(のどちんこ側)を考えていたのだと思われます。
実際には鼻の付け根に響きを感じられればそれだけで十分なのです。
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