歌が歌えるという事は人生に於いてとても大きな自信になります。逆に苦手だと思い込んでいる人にとっては、できるだけ歌わないですむように、歌わなければならない状況を避けたりと、精神的な苦労を感じることも多いかと思います。
ほんとにごく少数声帯の動きが悪かったり、またはほとんど動かなかったりで歌えないことはありますが、少なくとも普通にしゃべることが出来るようであれば、絶対に誰でも歌えるようになると思っています。ではなぜ歌が苦手だと思わなければならないことになってしまうのかを考えてみます。
よくある例の一つです。まずは小さい頃の音楽の授業で歌った時に、自分でどうも変だと思ってしまったり、先生や友達に変だといわれてしまった経験があると、その後苦手意識からなかなか逃れられない事があります。これは本当に歌えないというより、音の高さが合っていないことがほとんどです。
子供であっても音域はそれぞれで違います。本来ならばその子の声の高さに合った調に変えて歌わせるべきなのですが、そのような授業はほとんどなく、みんな同じ調で歌っていたのではないかと思います。子供ですので、この調は自分には高すぎて歌えないなど分かるわけもなく、なんとなく歌は苦手というレッテルを貼ってしまうことになります。高すぎるから今の調では歌えないと理解できるだけで随分違います。
初期の音楽教育はとても大切です。受験に関係ないし、これがないと生きていけないというものでも無いのでしょうが、歌が好きだと思って生きていく人生と、歌は苦手だと思って生きていく人生は大きく違うような気もします。
NHKのテレビで作曲家の三善晃さんがある小学校に行って音楽の授業をされる番組がありました。その時これから歌う曲を少し上げたり下げたりして、どの高さが歌いやすいですかと生徒に聞いていらっしゃる場面がありました。そのような経験がおそらくないでしょうから、生徒の方が戸惑っていて、どの高さが良いか分からなかったようですが、あれは音楽の先生に向かって提案されていたのではないかと思います。移調をして演奏することはとても難しいので、それなりのトレーニングをしなければなりません。さらにやっとで弾けるくらいだと、その時に生徒一人一人がどのように歌っているのかを把握することは、ほとんど不可能になってしまいます。しかし、それをやってあげるかどうかで、数人の生徒にとってはこれからの音楽人生が大きく変わることにもなっていきます。
歌は苦手だと思っていらっしゃる方、でももし出来ることなら歌えるようにならないだろうかと思っていらっしゃるようでしたら、近くの声楽教室の門をたたいてみてはいかがでしょうか。音域が合わなかっただけで歌えないと思い込んでしまうのはもったいないです。音域さえ合えば誰でも歌えるものです。
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