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イタリア古典歌曲~レッスンで 4

イタリア古典歌曲の特殊性

 生徒さんそれぞれに色々な始まりがあるということを書きましたが、その中でも、イタリアの古典歌曲を最初に使うことが一番多いです。全音から出ている、イタリア歌曲集という本を使います。その中の曲ですが、Caro mio ben(カーロ・ミオ・ベン)等はご存じの方も多いと思いますし、場合によっては高校の音楽の授業の時、イタリア語で歌ったことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、Ombra mai fù(オンブラ・マイ・フ)はCMで有名になりましたので、たいていの方が聴くとすぐ分かると思います。
 この曲集は音大を目指す生徒さんがたいてい一番最初に手にする楽譜で、入試でもこの本からたくさん課題曲が選ばれています。となると難しそうな気もしますが、そのようなことはなく、歌いやすいものが多いです。
 この楽譜は、よく使われる本ですが、とても中途半端なところがあります。作品はバッハ以前の(バロック時代の初期 :1600年代、日本では江戸時代の 初期です)ものが多く、しかし、ややロマン派的(1800年代の作品のような)な編曲がされています。
 また、オペラアリアもたくさん入っています。普通はオペラアリアは移調して歌うことはありませんが、この曲集では移調してあるため、さまざまな高さの声 の人が同じ曲を歌えるようになっています。そして、例えば女性のアリアを男性が歌うことなど普通はないのですが、この曲集では、誰もが歌えるようにまとめ られています。この中途半端なところも、もしかすると、この曲集が勉強の最初によく使われる理由の一つかもしれません。
 つまり、こうでなくてはいけないという規制が少なく、例えば、ロマン派的に歌っても良いし、バロックのように歌っても良い、またオペラは登場人物の性格や状況を考えて歌う必要がありますが、この曲集では、歌曲のように、詩と音楽から感じられるものを、歌う人の感性で自由に歌うことが出来ます。

高声用、中声用、低声用楽譜がある

 少し話が長くなってしまいましたが、さらにこの曲集がよく使われる理由の一つに、他の出版社のもの も含めると、高声用、中声用、低声用の3種類の楽譜があり、どのような声の人にも対応できるという所もあげられます。歌がうまく歌えないと思っていらっ しゃる方が、曲の調性を変えて(少し下げる方が多いのですが)しばらく練習すると、とても上手に歌えるようになるということは、よくあることです。
 すべての人の声の種類を3つに分類できるわけではありませんが、3種類の楽譜があれば、たいていの人がどの曲でも歌える高さになります。このような楽譜がそろっている曲は実はそう多くはありません。そのため、移調楽譜をそれぞれが作らなくてはいけなくなってしまいます。ぜひ 移調楽譜がたくさん出版されることを希望しています。特に日本歌曲は日本で作られない限り、出版されないことになりますので、日本の出版社に頑張ってもら いたいところです。
 レッスンでは、ちょうど良い高さの楽譜が手に入らない場合は、私が作ることもあります。(最近は楽譜ソフトの性能が上がって、以前よりずいぶん楽になりました)
 また、楽譜の知識のある方で、時間の余裕のある方は、書いてきて頂くこともあります。楽譜をよく見ることにつながりますし、とても良い勉強になります。(少し大変ですが・・・)

たくさん息を吸う~発声の考え方3

イタリア語

 初めて声楽のレッスンを受けられる人にとって、このイタリア歌曲集を使うことの問題の一つが、イタ リア語の発音です。しかし、皆さん割と早くにクリアされます。イタリア語の発音はローマ字読みに近く、また、スペルをみればたいてい発音が分かりますの で、英語の歌を歌うより早く、歌詞に慣れていかれる方が多いようです。
 それから意味がすぐには分からない言語の場合、日本語で歌うと恥ずかしくなりそうな?愛の歌でも、抵抗なく歌えることも外国語を歌うメリットの一つかもしれません。

発声の練習として

 そしてもう一つ、発声的にも、この曲集は便利です。例えば高い音に向かって強い音を出そうとする と、自然に発声に必要な筋肉が強化され、声の可能性が広がりやすくなるものですが、例えば日本の歌の場合高い音を少し弱く歌った方が良いもの、またはあま り強く歌わない方がよいものがたくさんあります。声を作ることを考えると、イタリア歌曲集はとても便利だということです。(しかし、便利だというだけです ので、他の曲から初めても何の問題もありません)
 それから声楽的な発声をするのに、日本語は難しい。発声ではよく開いた喉が大切ですが、日本語はあまり喉を開いて発音する言語ではないので、良い声と日本語がよく分かるように発音することを同時に成立させることがやや難しくなります。
 それでも歌に慣れてない方は、あまり音域の広くない日本歌曲から入っていくことをおすすめします。知っている曲の方が安心して歌えますから。

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