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声の波形2~発声のしくみ56

波形

 前回オシロスコープを使って色々な声の波形について書きました。ファルセットはきれいな正弦波になり、実声はやや形が崩れ汚い声を出すととてもいびつな形になります。画像も載せていますので、是非前回の記事も見てみてください。

声の波形~発声のしくみ51

きれいな波形の音が良い音ではない

 波形があまりにも崩れた声はさすがに音楽には向きませんが、ファルセットのようなとてもきれいな波形が一番良い音色ではなく、その中間に一番良いとされる声があることがとても興味深く思います。しかし音楽の世界ではこのようなことがたくさんあります。リズムは正しい方が良さそうですが、正しいだけでは面白くない。少し崩れることも必要です。しかし、変に崩してしまうと聞くに堪えない演奏になってしまいます。

色々な波形が出来る理由

 さて波形の話に戻ります。色々な波形が出来るのはなぜかということについて書いてみます。一つの音を出した時に一つの音程しかでていないように思われますが、実は色々な音程が混ざっています。これは倍音だけではなく、それ以外の音程も混ざります。そして色々な音程が混ざり合い干渉し合うことにより音色が変わることになるのですが、色々な音程が干渉した後の音の振動が波形として表されるようです。

 ファルセットは声帯が薄く引き伸ばされ、声帯の閉鎖が弱い状態ですので、中心の音程以外はほとんどでないのできれいな波形になり、実声の場合は声帯の張力がファルセットほど強くなく、さらに声帯が強く閉じられているので、他の音程が増えてきます。さらに汚い声を出すと、声帯があまり引き伸ばされず、バタバタと不規則な振動をすることにより、中心の音程と違った音程が増えていきます。結果どの音程を歌っているのか分からないような声になります。

音楽と波形

 ということで声に含まれる周波数の割合で声質が変わるということになります。そして色々な音程が混ざるということは正しい音程からいうと雑音になりますが、多少雑音が混ざる方が良い音で全く雑音が無い音は面白みの無い音になり、さらに雑音が多く鳴りすぎると音楽には使えない音になります。結局数値で良い音がどうかの判断は不可能だということになりますし、ほど良く濁っているから音は魅力的であり、純粋すぎる音は面白くないということです。もし波形のきれいな音が良い音だと感じるように人間が出来ていれば、理想の音に早くに到達してしまい、それとともに音楽は衰退し、無くなってしまっていたのかもしれません。しかしそうではないために音楽は永遠に向かい合っていてもいくらでもその深みに誘ってくれるように思います。

 あらゆる芸術にはこのような傾向があるように思います。ですので、理論的に良いと思えるものが本当に良いのかは疑わしいものです。

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