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高い音で苦しくなるのは声帯を閉じなければならないからについて~発声のしくみ49

「喉を開ける」と「喉を閉める」の本当の意味

 高い音を出す時や、高い音が続いていると苦しく感じることも多いものです。実は高い音はいつも苦しいのではなく、高い音でも声帯を閉じなければならないので苦しくなるということについて書いてみます。音を出すためには「喉を開けながら閉めなければならない」という言葉としてはとても矛盾することが必要になります。窓を開けながら閉めることが不可能なように、とても変な話です。しかし、南側の窓を開けたまま、北側の窓を閉めることは出来ます。つまり、喉を開けることと閉めることは違うものを指しているということです。言葉としてとても分かりづらいので、本来ならば、喉を開けるを声帯を伸ばす喉を閉めるを声門を閉じる、とでも表現されていれば迷わずに済むところだと思います。このことはあちこちで書いていますので、他の記事を参考にしてください。

喉を開けるは声帯を薄く引き伸ばすこと。

喉を閉めるは声帯の隙間がなくなるようにしっかりと閉じること。

声門閉鎖を断念した声がファルセット

 さて、高い音を出すためには声帯を引き延ばして薄くすることが不可欠となります。喉を開けるということです。意識しようとしまいと音程を上げていく時には必ずこの運動が起こります。そして限界が来るともう引き延ばせなくなるのではなく、音質が急激に変わります。これがファルセットです。この時に声帯は完全に閉鎖せず、少し隙間のある状態になります。つまり、声門の閉鎖を断念することにより、さらに高い音が出せるのです。そしてファルセットに慣れてくると、ファルセットで高音を出すことは全く苦しくない楽な音になります。しかし次の段階になって、しっかりとしたファルセットを出そうとすると、大変になってきます。それでも無理して頑張りすぎると、実声を出す以上に喉を壊しやすくなります。理由は簡単で、ファルセットで出来る声帯の隙間をそのままにすると音量が出ませんので、極力隙間の少ない音にします。これが大変になるのです。

 しっかりとした高音を出すのも同じで、声帯を十分に引き延ばした状態で、声門を完全に閉鎖する必要があります。この二つの要素は単独ではそれほど難しくはありません。それぞれを上手くコントロールできるように練習しつつ、同時に使える音域を徐々に広げていくことが必要になっていきます。閉鎖をやや弱くして、極力最高音まで出せるようにし、その状態になれていきながら、たまにしっかりと閉鎖させるなどの練習をしていきます。

声門閉鎖しすぎると声は出なくなる?~発声のしくみ 18

アクート

 特にテノールではアクートが必要だと言われますが、声帯がしっかり引き延ばされた状態で、強い閉鎖が出来た時に現れる声のことです。これが大きな目標とされるのは、声帯の筋肉としてはフルに使われた状態だからです。しっかりと筋肉が育たないと出来ないことです。しかし、伸展筋も閉鎖筋も緊張の強い状態ですので、緩めることも必要だし、緊張状態と緩んだ状態を自由に行き来できることも大切なことです。

 ということで、高音は声帯を閉じることが大変なわけですが、短い時間ならそれほど無理することなく出すことが出来ます。短い音での高音の練習もよく使われています。

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