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ヴィブラートはどこでかける?~発声のしくみ36

ヴィブラートは喉でかける

 ホームページを見ていただいた方から質問が来ましたので、お答えします。ヴィブラート~発声の目標 23でヴィブラートは喉の揺れだと書きましたが、それに対して、喉のどこをどう動かすのでしょうか?というご質問です。ご質問ありがとうございます。

ヴィブラート~発声の目標 23

 ヴィブラートは音程の変化です。これは声帯が変化しなければ起こりませんので、直接のお返事は声帯でかけると言うことになりますが、もう少し詳しく説明します。

喉は常に変化し続けている

 同じ音程で音を出し続けるのは実は大変なことです。音を出し続けるためには声帯を閉じ続けていなければならないのですが、声帯を閉じようと力を加えると、同時に声帯は縮もうとしていきます。何もしなければだんだん音は下がっていくわけです。それを阻止するために声帯の両端を引き伸ばし続けなければなりません。これが喉を開けると言うことにつながっていきます。つまり音を出している間中、声帯は常に変化し続けていると言うことが前提になります。

音の揺れの4つの状態

 音の揺れを4つの段階で考えてみます。

  1. 音の揺れがひどく安定しない状態 
  2. きれいにヴィブラートがかかっている状態
  3. 全く音の揺れが無い状態
  4. 音程すら聞き取れない状態

 1~3はヴィブラートの多い状態から無い状態への変化です。これは揺れている場所が変わったりしているわけではありません。全く同じで、程度の問題です。安定した音はとても大切です。表現は基本的に音の変化から引き起こされますが、音に安定感がなければ変化させても効果は半減してしまいます。よって1の状態は毛嫌いされるわけです。特に繊細な音楽作りをしているときには邪魔になってしまいます。3の状態は安定していて良さそうに見えるのですが、少し問題があります。最初に書きましたように、声帯は同じ音を出し続けていても変化し続けています。これを全く揺れないように固定しようとすると、過度に力を入れて声帯の柔軟性をなくしていくことにつながります。そのためノンヴィブラートではしっかりとしたフォルテや自在な音色の変化のゆとりがなくなってしまいます。安定した音の代わりに表情をなくしてしまうのです。古い作品の演奏をするときなど、ノンヴィブラートを要求されることがあります。間違った指示ではありませんが、声帯の柔軟性が阻害され、固めて出させているかもしれないということを認識した上で、要求すべきです。

ヴィブラートはあった方が良いとかあってはならないとかではなく、心地良い音になっているか、きちんとコントロールできるのかが大切です。

ヴィブラートのかけ方

 ご質問の方はヴィブラートがかからないので、どのようにかけたら良いかということのように感じました。3番の状態です。音を出すために過度に声帯に力を入れて安定させてしまっているために、揺れが起こってこないのです。そのため強弱の変化や音色の変化が少ないのではないかと思われます。喉に柔軟性が出てくれば自然に揺れが起こってくると言うのが答えなのですが、強弱も含めて自分が思っている以上に表情のある歌を歌おうとすることも一つの方法だと思います。声帯の柔軟性がないと表情はつきませんので、表情が付いてくるようになると声帯の柔軟性は増してきます。その結果自然にきれいなヴィブラートがかかってきます。

 1番の状態の方は逆に声帯が不自然に動きすぎていますので、声帯周辺の筋肉を強くしていく必要があります。例えば音程をいつも以上に正確に歌おうとするのも一つの方法だと思います。無理をするとかえって音の揺れがひどくなることもありますので、バランスを見ながらの練習が必要です。

 4番の状態にも少し触れておきます。声帯の伸展筋がほとんど動かないと歌えないだけではなく、何をしゃべっているのかもよく分からない声になってしまいます。名前は分からないのですが、格闘家の方で滑舌が悪いとかではなく、何をしゃべっているのかが分からないしゃべり方をする方がいらっしゃいますが、何らかの原因で甲状軟骨を傾けることが出来なくなっているのではないかと思います。そうなると音程が悪いとかではなく、音程が聞き取れる音が出ません。もちろん音なので何らかの周波数の音が出ているのですが、中心の音程が分からないため雑音のような音になってしまいます。レッスンで大抵の声は十分に歌えるようにトレーニングできると思っていますが、甲状軟骨が動かなくなってしまっているとおそらくトレーニングでなんとかなるものではないと思います。

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