レッスンを受ける時は指示されたことを一生懸命クリアしていこうとするものですが、その指示はどのように生まれてくるのかを少し書いてみようと思います。
教育実習に行った時に、各授業ごとに計画書を出してそれに沿って進めていくように指導されましたが、とても難しかった記憶があります。音楽史や楽典だったらまだなんとかなったのかもしれませんが、その時は文化祭に向けての合唱の練習でした。みんながどのような歌を歌ってくれるのかも分からないのに、前もって計画するのがどうしても出来ず、結局は計画書は全く無視した授業をやっていました。
少し話がそれてしまいましたが、レッスンにいらっしゃる生徒さんはそれぞれ特徴があり、新しい生徒さんがいらっしゃる度に、常に新鮮な発見があります。また、長く続けていらっしゃる生徒さんも、その時々で変化があり、またレッスンの最中にその生徒さんの新しい面を発見することも頻繁にあります。このようなことも含めて私にとってこの仕事はとても楽しいものです。
ここからが本題です。少し経験のある方は最初に1曲聴かせて頂くことが多いですが、そこで発声的なこと、音楽的なことのほとんどは分かります。高い音が出ているとか、苦しそうだとか、音楽表現があるかないか、音程は良いかどうか、といったような漠然としたことではありません。例えば発声に関しては、音程に合わせて声帯の変化は適切に行われているのか、またそれに対して横隔膜が無理なく連動しているのか、それは広い音域の中で、どこが良くどこが良くないのか、強弱や表情の変化に対して、声帯や呼吸筋は適切であるか等、挙げると切りが無いのですが、1曲聴かせて頂くとそのほとんどが分かります。音楽的なこともそうです。音程に不安定さがあったとして、発声から来るものか、音を聴くことの不足か、和声感覚を持って音程を捉えているのか等、音程は機械的なピッチが何よりも大切な感じもあると思いますが、音楽的な音程を聴きます。音楽表現に関しても、旋律の動きに対しての表現、伴奏と一体になった表現、言葉を感じての表現など、色々な要素があります。そのような中で、よく出来ているものとまだまだ開発の余地のあるものを分類していきます。
ここまではそう難しいものではありませんし、良い耳を持った音楽家はほとんど同じように捉えるものです。さてここからが難しいところです。上に書いた以上にたくさんの要素がありますが、その中からすぐに手を付けた方が良いもの、後回しにした方が良いもの、時間はかかるが常に見続けなければならないもの等を分類し、今必要なものをどのような方法で進めていくのかを考えます。
教育実習の話を書きましたが、授業の計画書はやっとこの段階でかけるかもしれません。ただそれでも、この計画はそのまま実行されるものでは無く、頻繁に修正されながら進んでいくものだと思います。
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