発声のトレーニングでは、常に自分の声の何が良くて何が良くないかの判断をし続けなければなりません。この判断が正しければ常に声は進化し続けることになるのですが、なかなか難しい問題があります。
あまりおすすめできない声の診断の方法で、録音機を使うことが考えられます。一見便利に思えるのですが、録音された声と実際の声には大きな差があります。また、録音で聞こえる声は聞き慣れてくると大丈夫になりますが、なれていないと違和感を大きく感じます。違和感が大きいとそれだけで良くないと判断しますので、正しく判断できなくなります。
また、録音では、本当に良い声と比べて、少しのどを固めた声の方が良い音に聞こえます。録音でいい声を目指して練習をしていくと、ややのどに力の入った固い声になりやすく、音の広がりや伸びやかさがなくなりやすくなります。
また、他の人と比較してもっと大きな声にならないといけないとか、明るくないといけない、太くしなければ、逆に細くしなければ等、いろいろ考えることもあると思いますが、自分にとって良い声は他人の声とは違いますので、これも判断を誤りやすいです。本来の声ではない目標を持つと少なからず無理をして、そのうちそのしわ寄せが来ることになります。
声を正しく診断することはとても難しいことですが、絶対に正しいことの一つが今出している声が自分にとって心地いいのかどうかという判断です。他人にとっても心地よく聞こえればベストですが、とりあえず自分にとって心地よいかどうかがまず大切です。心地よい声は音程を変化させたり、強弱を変化させることに無理がなく、またハーモニーに自分の声を溶け込ませることが出来、長く伸ばすことも無理がなく、微細な色合いの変化が容易になります。
楽に出せる声と心地良い声には少し差があることもあります。楽に出せるだけの声だとワクワクしない。
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