パイジエッロの「美しい水車小屋の娘」というオペラの中のアリアです。このオペラは楽譜も残っているようですが、ほとんど上演されていないようです。ちなみにシューベルトの「美しき水車屋の娘」とは関係ありません。
この曲は愛に翻弄されて苦しんでいる様子をとてもコミカルな作風で描いています。芸術に於いてコミカルなものはとても重要な素材です。それもちょっとした遊びや気休めのようなものでは無く、場合によっては一番大切なものこそコミカルに表現されることもあります。
コミカルな要素はあちこちで見られます。前奏のピアノの右手のリズム、跳躍の多い歌の旋律、時々現れる歪なリズム、コロコロと変わる表情、時折見せる深刻さなど。演奏はそう容易ではありません。急激に変わる音程にしっかり反応することや表情の変化にすぐに付いていくことなど、結構練習の必要な作品です。
この曲のレッスンの際、よくピエロの話をします。ピエロのメイクは大笑いしているような口と同時に涙を書きます。楽しいことを見つけるとニコニコし、失敗すると悲しむ。素敵な子を見つけてウキウキし、振られて大泣きをする。このようなコロコロ変わる表情を演じ分け、一瞬一瞬にすべてを賭けて体験することが必要なのだと思います。まさに人生はそのようなものでは無いでしょうか。
この曲を通して、大真面目にコメディを体験できると良いですね。
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