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音楽家の耳の良さ、悪さ~音楽について65

実は音楽家は意外と耳が悪い

 良い音楽家に絶対に必要な要素は耳の良さです。テクニックや読譜力、表現力など色々な大切な要素もありますが、とりわけ必要なものを一つあげるとすると耳です。しかし、医学的に耳が良いというのとは違います。医学的にはまず小さな音が聞こえることと、高い音が聞こえるかが重要になります。聴力検査では小さく聞こえる色々な高さの音が聞こえるかどうかが調べられます。同じ年齢の音楽家とそうではない人を比べるとほとんど同じか、音楽家の方が悪い結果になるのではないかと思います。(事実は分かりません。予想です。)なぜなら音楽家は結構耳を酷使しているからです。プロの声楽家の声は結構大きな声になります。その声を毎日何時間も聞くわけです。耳に良いはずがありません。ピアニストは、条件がそろえばできるだけ大きなピアノを買って練習します。もちろんとても大きな音が出るし、さらに自宅で練習する時は広い空間ではなく、ガンガン響く部屋での練習になります。これが長時間になれば耳にはとても悪い条件になります。

音楽家の耳の良さ 音程

 医学的な耳の良さではないとすると何かということになりますが、容易に想像できるところも多いでしょう。ちょっとした音程の違いが分かるのもその一つです。レッスンを受けると、少し高いとか低いと言われることがありますが、自分ではよく分からないといった経験もあるでしょうし、チューニングが必要な楽器を演奏する時のチューニングも最初は苦労するものです。しかし1つの楽器でチューニングが問題なくできるようになると、新しい楽器の練習を始めたとしてもその楽器のチューニングはすぐにできるようになります。つまり耳が育ったということです。

細かい音型を聞き取る

 次は細かい音符を聞き取れるということです。速い曲の装飾音は演奏できるギリギリの速さになったりしますが、それを聞き取り再現できるような耳の良さです。声も良くなり表情もついてきたのに、細かい装飾音を正しく入れることが難しい方が時々いらっしゃいます。これはテクニック不足ではなく、耳の問題の場合がほとんどです。ですので細かい音の動きが聞き取れるようになるとクリアされることになります。個人差がありますが、結構時間がかかる人もいます。それでも辛抱強く聞き続けると間違いなく皆さんできるようになります。

同時に複数の要素を聞き取る

 もう一つの重要なことがいくつかの声部や要素を同時に聞けるということです。歌いながらピアノ伴奏を聞くというのもその一つです。それだけではありません。ピアノにはベースの動きがあり、和音があり、対旋律があることもあります。歌にも音符だけではなく、歌詞もあります。音に集中している時に語尾のtの発音が聞こえない等の指摘を受けることもよくあります。発音しているのかしていないのかが聞き取れていないからです。たった3段の楽譜の歌曲でもこれだけ大変なのに、オーケストラでは20段以上の楽譜になることもあります。指揮者はこの大量な音から、音程やリズムにひずみ、場合によってはミスを聞き取り指摘できないといけないわけですから、簡単な仕事ではありません。そしてこのいくつかの要素を同時に聞き取ることが一番重要で難しいことです。いくつかの要素を同時に聞き取るといっても、何人かが同時にしゃべるのを一度に聞き取るといったこととは違います。4声帯のフーガを見事に聴き取れる人であっても、4人が同時にしゃべった内容を聞き取ることは難しいと思います。このことはまた別の機会に書こうと思います。

 音楽家の耳について書いてみました。医学的な耳の良さとは別のものです。音楽家は耳にトラブルがなければ何らかの仕事は続けられるでしょうが、他に全く問題が無くても耳に問題が出てくると何もできなくなってしまいます。しかし、結構酷使しますので、耳鳴りや突発性難聴等で苦しんでいる音楽家も結構います。音程を聞き分けること、細かい音の動きを聞き取れること、多声部を聞き取れることの3つを書きましたが、その他にも、音質、音色を聞き分けるとか、音楽的な音なのか、そうではないのかを聞き取れるような表現に関することも必要になります。しかし今回書いた3つのことはトレーニングが必要であり、またトレーニングすると誰でも身につけることができる耳の能力ですので、まだ足りないと思う人は練習できた方が良い部分です。

耳のトレーニング

 これらの耳の良さを獲得するのには生まれつきの能力が大きく関係していて、少しトレーニングしたくらいでは身につかないと思うかもしれませんが、そうでもありません。得意不得意が明確に分かる部分ですが、苦手な方は慣れていないだけです。例えば言葉を聞き取るということはとてもしっかりとした耳の能力が必要になりますが、何の苦労もなく皆さんできています。TとPの子音は息を一度せき止めて発音するという意味では同じものですが、Tは舌と上顎でせき止めるのに対し、Pは上下の唇でせき止めます。たちつてと、ぱぴぷぺぽを使い分ける言語の世界で生きていますので、まず聞き間違えることなく分かります。しかしSとTh(英語の濁らない方)の発音になるとどうでしょう。Sは舌と上顎の隙間を通る音、Thは下と上の歯の間を通る音の違いですが、日本人にとっては非常に難しくなります。もちろんアメリカ人にとっては簡単な聞き分けです。慣れているかどうかだけです。集中して一週間くらいthinkとsinkのように正しくSとThの違いをはっきりと区別して発音し、また聞く練習をすると、完全に分かるようになると思います。日本人が苦手だと言われるLとRの発音も同じことだと思います。私はドイツ語は完全に発音から入りました。ですので、ほぼLとRで迷うことはありません。Reise(旅行)とleise(静かに)でどちらがRでどちらがLかで迷うことは本当に今まで一度もありませんでした。

 集中してトレーニングできると短期間で獲得でき、そうでなければずっと苦手なままになってしまうのも、この耳のトレーニングの特徴かもしれません。

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